頑張らない英語学習法 著者:西澤 ロイ 出版:あさ出版 発行日:2010/4/8 |
無理のない英語学習法を提案する。
頑張って暗記をするのではなく、納得感をもって学ぶことが大切。
初級者への基礎的なアドバイス
「頑張らない」というタイトルに惹かれた人が多いはず。どんなことでも頑張りすぎると続かないので、「頑張らない○○」「無理をしない○○」というのは継続の基本原則といえる。
継続が難しい分野といえば、なんといっても英語が思い浮かぶ。英語を習得したいのに挫折してしまった人は珍しくない。英語学習こそ頑張らずに継続したいものである。
ということで、本書に期待する人は多いはずだが、本書の内容はどちらかといえば常識的なアドバイスが多い。
中学1、2年の人を対象にしたごく基礎的なアドバイスがほとんどで、「英語の語順で読む」「動詞の重要性を知ろう」といった内容が続いていく。
学習姿勢を根本的に変えるような内容を期待した人がいるとすれば、拍子抜けすることになるだろう。(そのような人が期待する内容は、「国際人の英会話学習法」あたりが近いかもしれない。)
ただし、本書のタイトルが偽りというわけではなく、「量ではなく質を重視する」ことが本書の主張。闇雲に学習量を増やして頑張るのではなく、英語の「理解」を大切にしよう、というのが一貫したメッセージになっている。
英語の構造が理解できていない段階の人にとっては、単に学習量を増やしても無駄になるだろう。最初のうちは、精読型の学習(スラッシュリーディングなど)で英語を理解するための学習が必要となる。
学習法に詳しい人にとっては当たり前の話なのだが、学習経験の少ない初級レベルあたりの人には有用な内容となっている。本書は中学2年程度の初級者にお勧めできる学習ガイド。
学習の「質」と「量」というのは重要なポイントで、「達人の英語学習法」で言及されていたことだが、質と量は両立しない。最初は「理解」するための地道な学習をしないと伸びシロが増えないのだ。
「もやもや翻訳術」とは
本書のターゲットは初級者だが、項目によっては興味深いアドバイスがある。たとえば、英語を話すための「もやもや翻訳術」というノウハウが印象に残った。
「もやもや翻訳術」とは、日本語をそのまま正確に英訳するのではなく、曖昧なイメージから英語を作り出すこと。
たとえば、「私は3時間も勉強したので疲れた」を英語にするケース。これをすぐに英訳しようとするのではなく、その状況を想像してみよう。
何を勉強したのか? 何時まで勉強したのか? はかどったのか? 疲れたのか? 腹は減ったのか? こういったことをイメージしてみる。
すると以下のような言いたいことが浮かんでくる。
「ようやく終わった!」 「すごく頑張った!」 「ああ、お腹がすいた!」などなど。
そう。これらのうちどれかを英語にすればいいのだ。言いたいことを英語で伝えたことになるではないか。一見すると冗談みたいな話だが、リアルな英会話術とは案外こういったことかも知れない。
(「英会話とスピーキングの本」ページで紹介したパラフレーズ系の本と似た考え方)
「私は3時間も勉強したので疲れた」という日本語を英訳しようとするから、「3時間」「~も」「勉強した」「疲れた」など、あれこれ考えて話せなくなる。状況をぼんやりとイメージすれば、とりあえず何か思いついたことを自分なりに英語で発信できる。
こういったアドバイスは、英語を学ぶ初期のうちに触れておくのが望ましい。学校英語に染まっていくと「英語学習=テストで良い点を取るため」といった発想が身に付いてしまう。すると、一言一句正確に翻訳するようになり、その結果として英語で話せなくなる。
「もやもや翻訳術」は、テストの解答としては×かも知れないが、リアルなコミュニケーションでは出発点となる。