外国語学習に成功する人、しない人

外国語学習に成功する人、しない人―第二言語習得論への招待

著者:白井 恭弘
出版:岩波書店
発行日:2004/10/20

母国語は自然と話せるようになるが、外国語の習得は難しい。よく考えてみると不思議なこの現象は、「第二言語習得」という研究分野のテーマとなっている。

本書は、この分野をわかりやすく紹介したもの。外国語習得についてのあらゆる話題を網羅しながらも、エッセンスだけを簡潔に紹介しているので、2時間程度で読み通せる軽い本となっている。

外国語を学ぶではなく、外国語で学ぶ

読者の多くが知りたいのは、「どうすれば効果的に外国語を習得できるのか」という点に尽きると思われる。

残念ながら、「ベストな方法はこれだ!」という決定版はないという。しかし、ひとつ確かなことは、「意味」を中心とした学習が必要だという点である。

かつて、外国語の学習といえば、文法を中心とした学習(オーディオリンガルアプローチ)だった。言語の「形式」を学ぶことが中心だったといえる。しかし、いくら形式を学んでも外国語は習得できないことが明らかになっている。

そこで今では、メッセージの伝達に重きをおく学習(コミュニカティブアプローチ)が基本となった。「形式」ではなく、「意味」を中心とした学習である。

たとえば、興味のある分野の本を外国語で読んだり、人とのコミュニケーションを外国語でとる。

そのプロセスで、その言語を習得しようというもの。外国語を学ぶというより、身につけたい外国語で何かをすることによって習得を目指す。言語の習得にはこの視点が欠かせない。

英語習得のコツ

本書では、最後に付録として外国語学習のコツをまとめてある。その内容をピックアップして簡単にまとめると以下のようになるだろうか。

  • インプット :
    自分が興味ある分野(よく知っている分野)で学ぶことで、外国語を理解するのではなく、そこに書かれている内容を受け取ることを中心にする。リスニングは20パーセントわかる教材ではなく80パーセントわかる教材を何度も学習。
  • アウトプット :
    日記をつけるなど、毎日少しずつでもやる。これによってインプットの処理レベルがあがり、頭の中で外国語を考えること(リハーサル)を行う機会がもてる。アウトプットの機会がないとリハーサルができない。
  • 文法 :
    基本的なもの(中学~高1)までを学び、文をつくれるレベルにもっていく。つまりアウトプットできるレベルまで。難解な文法は不要。

これら「外国語学習のコツ」を見る限りでは、それほど目新しい内容ではないように感じる。それだけ最前線の研究成果が巷に浸透しているということだろう。

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