英語上達7つの法則―“使える!話せる!”シンプル英語のすすめ 著者:晴山 陽一 出版:PHPエディターズグループ 発行日:1998/08 |
著者の晴山陽一氏は、英語教材の「多作家」として知られている。本書を書いた1998年の時点で、すでに四半世紀にわたり中高生向けて教材を開発したキャリアをもっている。
累計500万人の読者に向けて「アフターケア」のつもりで本書を執筆したという。今では社会人になってる読者に向けて、「学校で学んだ英語は無駄ではない」ということを伝えている。
アフターケアとしての学習ガイド
全編を通して貫いているテーマは、中学高校で学ぶシンプル英語の大切さ。
もちろん、今となっては、このことに疑いを持つ人はほとんどいない。英語ができない人は、そのレベルの英語が身に付いていないのだ。基礎英語を使いこなせていないことになる。
本書は、シンプルな英語を使いこなすためのポイントが満載の学習ガイドとなっている。具体的に内容を見てみよう。
項目の背後にあるノウハウ
タイトルにある「英語上達7つの法則」とはどのようなものだろうか。「シンプル英語7ヶ条」として以下の7項目をあげている。
- まず聞き上手になれ!
- 発音はうまくなくてもハッキリと!
- 会話は形より中身!
- 文法は中学レベルで十分!
- 自分用の表現集を作れ!
- うまい表現よりシンプルな表現!
- 名詞中心に単語力をつけよ!
7つの項目をみると単純なことを語っているように見えるが、読んでみると細かいノウハウをたくさん発見できる。
たとえば、1の「まず聞き上手になれ!」では、英会話において聞き手になることを推奨している。低い英語力をカバーしながら、会話に参加できるからだ。
そのためには、「疑問文のスケール」を知っておいた方が良いという。what,when,howなどの疑問詞には、「より主観的←→より客観的」という濃度がある。初対面で主観的な質問をするとびっくりさせてしまうので、相手との距離感によって疑問詞を使い分けるようにする。聞き手の側が注意したいポイントだ。
語彙力をつけるコツ
7番目の「名詞中心に単語力をつけよ!」というのは、あまり聞いたことがないアドバイスかも知れない。
学生の頃は、「英語は動詞が大切」と教えられることが多い。動詞によって可能な文型が絞られてくるので、英文の構造を理解するためには動詞に注目するのがセオリーだ。
しかし、本書が語るのは文型の話ではなく、難易度の話である。あらゆる英語において、動詞のレベルは低く、名詞のレベルは高い傾向がある。特に、大人が日常的に交わす英会話とか、大人が読む英文というのは、動詞は易しいけど名詞はかなり難しい。その名詞を知らないと話にならないことが多いのだ。
これはまったくその通りで、英字新聞などのテキストを見ればよくわかる。動詞は高校までの英単語で8割カバーできるはずだが、名詞は難しい単語が多いうえに、内容の核心部分になっている。
ゆえに、名詞に力を入れよ!という法則になる。では、どうやって英単語を覚えればいいか。
語彙力をつける秘訣は、「覚える練習」はなるべく短くして、「思い出す練習」を徹底的に増やす。
知らない英単語を覚えるときは、まず時間をかけずに強引に目を通す。覚えられなくても良いから、一気に知らない英単語に触れてしまうことが大切だという。
その後、思い出す練習をするわけだが、この部分をどれだけ繰り返したかによって、語彙力が決まってくるという。できるだけ早く「思い出す練習」に移行することがコツとなる。
著者は単語についての教材も多く執筆しているので、語彙力については一家言ある。大量に英単語を覚えるときには試してみたいノウハウだ。