英語リスニング・クリニック 著者:篠田 顕子, 石黒 弓美子, 水野 的, 新崎 隆子 出版:研究社出版 発行日:2000/8/1 |
二人の架空の人物がリスニング上達をクリニックに依頼し、それぞれの症例に合わせて治療する(リスニングを上達させる)というアイデアで書かれてたリスニングの学習法案内。
対話をとおして問題点をあぶり出し、適切な改善につなげる。類書にはない優れた視点で書かれた英語学習ガイド。
リスニングを苦手とする典型例
クリニックに依頼したのは、文法は得意だけどリスニングが苦手の佐藤君と、英会話は得意だけど文法は苦手の山田さん。
典型的なパターンなので、多くの読者はどちらかに当てはまるのではないだろうか。
それぞれの状況に合わせて学習法を指導しているが、その内容は予想通りのもの。
リーディングに偏っている佐藤君には、音の理解・ディクテーション・シャドーイングという順番の学習。
文法が苦手な山田さんには、語彙力強化・文法と構文・シャドーイングの順番で学習することになる。
本書ではスラッシュ・リーディングとスラッシュ・リスニングを特に強調している。
ご存じのように日本語と英語は語順が異なるので、意味上の固まり(チャンク)ごとに文頭から理解するトレーニングは重要となる。
本書はあくまで学習ガイド
学習法ごとに学習素材がついているが、あくまで学習法を理解するための素材だと考えておこう。
素材のレベルが読者のレベルとピンポイントに適合するとは限らないし、多くの学習法を紹介しているだけに、一つの学習法に付いている学習素材はわずかな量しかない。
本書だけでリスニングを上達させるのは無理があるので、本書から学習のやり方を学んだら、自分の教材を使って練習を続けてほしい。
自分を分析することが大切
本書の良いところは編集の工夫にある。
医者と患者の対話形式をとることによって、「自分の症例をつかみ、その原因を知り、治すための診断をして、治療する」という客観的な学習プロセスが実演されている。
英語が苦手な人ほど闇雲に勉強してはいないだろうか。学習の前に計画を立てて、常にフィードバックしているだろうか。
本書は、自分に足りない部分を理解してそれに相応しい学習をする、という態度の重要性を実感させてくれるのである。
本書に書かれているアドバイスの数々は、よほど良い教師と巡り合わないと得られないものばかりだ。