究極の英語ライティング 著者:遠田 和子, 岩渕 デボラ (英文校閲) 出版:研究社 発行日:2018/9/15 |
「英語らしく書く」ための実践書。伝わる英語を書くコツが見事に整理されている。
英文ライティングの必読書として一押しの教材。
見事に整理されたライティングのコツ
著者の遠田和子さんと岩渕デボラさんは、名著「英語なるほどライティング」の著者でもある。
本書「究極の英語ライティング」は、例題を多用することで、より実践的な内容になっている。
まず目次を紹介したい。
英語らしく書くためのコツを7章で学ぶ。
- 主語の設定
- 受動態を能動態に
- 強い動詞を選ぶ
- 短く洗練された表現
- 要素を効果的に並べる
- 具体的に書く
- 肯定的に書く
各章では、さらに細かくポイントが列挙されている。たとえば4章「短く洗練された表現」では、以下の通り。
「短く洗練された表現」にするためには、STEP1「余計な語句を減らす」とSTEP2「簡潔な表現で言い換える」というアプローチをとる。
それぞれのステップで、さらに細かいアプローチ法が紹介されている。
日本人が書きがちな「英語らしくない英文」をどうしたら「英語らしい英文」にできるか。そのポイントが見事に整理されている。
例題の使い方が効果的
本書の中身を見てみよう。
第1章「主語の設定」のSTEP1「ほかの主語候補を探す」の中の「誰が主人公かを考える」項目を紹介したい。
日本語に引きずられると不自然な英語になりがちだが、とりわけ「何を主語にするか」がライティングで大きなカギとなる。
(問題6)
典型的な新興企業の場合、大手銀行からは融資を受けられない可能性が高い。
この文章をどんな英文にすればいいだろうか。
日本語に引きずられて「可能性が」を主語にすると、
(例文10)
In the case of a typical startup, the possibility is high that it will be unable to get loans from major banks.
こんな複雑で冗長な英文になる。
そもそもこの文章の主人公が何かといえば、startup(新興企業)ではないだろうか。それを主語にすると、こんな簡潔な英文になる。
(例文11)
A typical startup will probably fail to get loans from major banks.
英文ライティングは主語選びが、第一のキーだとよくわかる。
本書は、それぞれの項目を一方的に解説しているわけではなく、上記のように例題を使いながら解説している。
複数の英文を対比させながら、より英語らしい英文へとガイドしていく。
ライティングの論点を網羅
7つの章は、それぞれ2つのSTEPがあり、各STEPには3~4の項目がある。
「英語らしく書く」コツがかなり網羅的に取り上げられている。
5章の「要素を効果的に並べる」のSTEP1「情報の新旧を見極める」では、パラグラフライティングにも触れている。
複数の文章を書くときには、文のつなぎ方が重要となる。
既知の情報(Given)を先にして、それが導く新しい(New)情報をあとに置くのが大原則。
この(Given→New)原則を守った文章は、英語・日本語にかかわらず読みやすい文章となる。
本書はこのテーマについても、「Given→Newの情報提示」「Givenをトピック(主語)に」「Given→Newで文を分ける」「Given→Newと受動態・つなぎ言葉」「Given→Newと倒置」といった切り口で解説している。
驚くほど学習効果が高い構成になっている。
最後まで一気読みできる「読みやすさ」
本書の解説文は口語体で、英文をはさみながら連続的に読めるように配慮されている。
参考書のようなぶつ切りの文章ではなく、講義を受けているような臨場感のある文章。
内容は深いのに、一気読みできるほどの読みやすさがある。
英文ライティング教材を探している人には、本書を強くお勧めしたい。