増補全面改訂 こなれた英文を書く技術 著者:黒川裕一 出版:ベレ出版 発行日:2012/7/17 |
「間違ってはいないが今一歩の英語」から「よりナチュラルで分かりやすい英語」にステップアップするコツを紹介している。
ほとんどは中学英語レベルながら、幅広い人に有用なライティングガイド。
ナチュラルな英文テクニックを網羅
本書では、以下のようなことを学ぶ。
「Jackは歩いていた。彼は手をポケットに入れていた」といった内容を書きたいとき。
Jack was walking. He had his hands in his pockets.
このようにぶつ切りの英語になってしまうことがある。これを「こなれた英語」にするにはどうするか。
withを使って一文で表現する。
Jack was walking with his hands in his pokets.
もう1つ引用しよう。
「もし~なら」という表現は日常でよく使われるが、英語になると使えない人が多い。
「先日を貸した本は取っておいていいですよ」と言いたいときに、「もしそうしたければ」を加えられるだろうか。
You can keep the book that I lent you the other day, if you want to.
このような「条件の付与」ができることで、こちらの意図が伝わり易くなる。こなれた英語を書くときの大切なポイントといえる。
本書は、上記のようなテクニックを83パターン紹介している。「ニュアンスをはっきりさせる」「ポイントを強調する」「断定を避ける」など8つのワザに分類されているから、英文を洗練させるのに役立つことだろう。
英語のレベルは易しい
上記の引用でも明らかだが、1つ1つの英文は難しくない。「こなれた英文」というタイトルからハイレベルの内容を期待すると拍子抜けするので、そこは注意したい。
ほとんどが中学英語レベルの話で、「否定を強調するならnotよりもnever」とか「関係詞を使って1文に」とか「not A but B」といった易しいテクニックがほとんどだ。
ただし、実際に英文を書いてみると、そのレベルの英語が使えないことが多い。一通り目を通してみれば、ここまで易しいテクニックで「こなれた英語」になるのか!と驚くはず。
ところで、アマゾンのレビューは辛すぎると思うのだが、どうだろうか。買ってみて期待と違った人がキツイことを書いているのだろう。「ロジックがない」という批判があったが、本書のような簡単な表現を学ぶのに論理的な解説は必要ないと思われる。
こなれていない英文を書くのが第一歩
本書は「こなれた英語」を書くためのライティングガイドだが、そもそも「こなれていない英語」を書けるのか、という問題がある。
稚拙な英語でもいいから、とりあえず言いたいことが英語で書けるだろうか。
上記の例でいえば、「Jackは歩いていた。彼は手をポケットに入れていた」と言うために、
Jack was walking. He had his hands in his pockets.
という「こなれていない英語」がすぐに書けるだろうか。
レベル的には中学2年生程度だが、これをフリーライティングで書けるレベルに達していない人が多いはずだ。
たとえ、「こなれていない英語」であっても、とにかくアウトプットできることでコミュニケーションがはじまる。その上で、「こなれた英文」へとステップアップしていくことが大切だ。
「ヤスの英語」の主張とも重なるが、英語のコミュニケーションにはステップがある。
最初から完成された英文を書こうとすると、どうしても日本語を英語に翻訳するようになる。それではまったく話せないし書けないので黙ってしまうことになる。(そもそも英語が苦痛になる)
「こなれていない英語」が書けない人は、まずは最低限の英語が書けるようにアウトプットの練習をしよう。その基盤があれば、あとはいくらでも「こなれた英語」に上達できる。