なぜ、その英語では通じないのか?

なぜ、その英語では通じないのか?

著者:マーク・ピーターセン
出版:集英社インターナショナル
発行日:2016/4/5

マーク・ピーターセン氏の近著。

日本語と英語のギャップ、英文法の誤解、英語表現の使いこなしなど。

英語の深い理解に誘ってくれる名著。

なぜマーク・ピーターセン氏の本は面白いのか

マーク・ピーターセン氏の著書にはハズレがない。

英語の感覚がすっきり理解できるのはもちろんだが、とにかく読んでいて面白い。

これほど面白い理由は、ピーターセン氏の経験がふんだんに盛り込まれているからだと思われる。

ピーターセン氏が日本語を学んだときの経験。日本の学生に英語を教えた経験。

そういった生きた経験が書かれているから、エッセイとして楽しめる。

そして、筆致がおだやかで、ピーターセン氏の著書はすべて「言葉についての思索」になっている。

単に正解を羅列する内容ではなく、「こういった英語表現に出くわしたが、これをどう考えればいいのか」と探求していく姿勢がある。

ぜひ多くの人にピーターセン氏の著書に触れてほしい。

読んでよかったと思える項目ばかり

本書は、3つの章からなる。

  1. 日本語と英語のギャップを考える
  2. 知ってるつもりの基本文法・語法
  3. 一歩進んだ英語表現を目指して

3つの章の中でさまざまテーマを取り上げている。

  • 「苦手」は英語でどう表すか?:「私は英語が苦手です」の訳し方
  • 「ほとんど」を表すには:almost=「ほとんど」にあらず
  • 「ある」をどう表すか?:「There+be動詞」か have か?
  • 「~など」をどう表すか:使いこなしたい”including~”
  • willの意味:willが起こす勘違い
  • no と not を使わない否定文:見かけは肯定分の否定文
  • 「受動態」:受身の効果的な使い方
  • 分詞構文:洗練と簡潔さを求めて

などなど、どれも本当に興味深い内容だった。

マーク・ピーターセン氏は大学で教えているので、日本の大学生が間違えるポイントについて大量のデータがあり、深く理解している。

だからこそ、単に「英語はこうですよ」というだけではなく、日本語ネイティブが知りたいポイントを解説できる。

willは奥が深い

本書の中から1項目を紹介したい。

未来のことを示す助動詞のwillだが、私たちは中学生のころに、英語の授業で

It will rain tomorrow.

といった英文に何度も触れた。

そのため、未来の推測として、単にwillを使えばいいと思い込んでしまっている。

しかし、マークピーターセン氏は、「明日、雨が降るでしょう」という天気予報は以下のように述べるという。

It will probably rain tomorrow.「おそらく」
It looks like it will rain tomorrow.「降るようです」
We can expect rain tomorrow.「想定できます」
The outlook is for rain tomorrow.「見込みです」

つまり、単純な推測なら、willだけを使うことがない。

ここは日本人の英語でwillの大きな誤解になっているところになる。

本書では、日本の大学生が「卒業したら代理店に勤めるつもり」と英語でいうときに、内定前なのにwillを使った事例があった。

単にwillだけで表現すると、そこまで予言できる理由がわからないことになる。

「つもり」といいたいなら”expect to””hope to”を使うこと。

そして、単なる推測でwillを使うなら” I think”をつけたり、”most likely”といった表現を加えたい。

未来のことを単純にwillで表現する癖が日本人にはあるので、ここは要注意ポイントだ。

willのような一見簡単で、よく使う表現ほど、奥が深いとつくづく思った。

本書はこのような「読んでよかったポイント」ばかりなので、強くお勧めしたい。

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