CD付 即戦力がつくビジネス英会話 改訂増補版: 基本から応用まで 著者:日向 清人 出版:ディーエイチシー 発行日:2014/2/25 |
2004年のNHKラジオ「ビジネス英会話」のテキストを基にした教材。
2007年に初版が発行され、2014年に増補改訂版が出た。
圧倒的な質量を誇るビジネス英会話教材。
NHK発のハイレベル・ビジネス英会話教材
「ビジネス英会話」といえば杉田氏が思い浮かぶが、2004年は日向清人氏が講座を担当した。
想定されているリスナーのレベルは杉田氏と同じ。NHKラジオ英語講座の最高レベルで、中上級レベルの学習者に向けた内容となる。
ビジネス英会話の教材として、類書の「場面別 会社で使う英会話」を以前レビューした。採用しているビジネスシーンは重なっているものの、別次元の教材というほどレベルが異なる。「場面別」は中学レベル、本書は高校レベル以上となる。
質量ともに大満足
内容は、会議、交渉、プレゼンなど52のビジネスシーンを学ぶ。ダイアログ(会話)と重要フレーズを学んだ後で、「穴埋め英作文」と「穴埋めディクテーション」を行う。
本書の特徴は、なんといっても品質が高くて、量が豊富なこと。ダイアログもリアルな内容だが、英語力をつけるようなヒントに満ちている。
実際に本書の中を見てみよう。
以下、「合意への障害を取り除く」をテーマにした LESSON39。
ビジネスシーンのダイアログ。リアルな交渉が繰り広げられる。
次にFOCUSとして、言い回しを見ていく。
ここでは、以下の英語表現を学ぶ。
- 個別の事項について質問する
- 相手の質問に対応する
- 両者にとっての障害(対立点)を明確にする
- 自分たちにとって何が問題かを伝える
さらに、「単刀直入に論点に入りたいときの言い回し」として決まり文句を学ぶ。
- 問題点をしぼる
- 核心に入る
- 無駄な議論を避ける
それぞれの表現にはちょっとしたTIPが挟みこまれていて、飽きずに学習できる。
このようにして、「合意への障害を取り除く」という1つのテーマについて、多面的に学ぶことができる。交渉のシーンで使えそうな気がしてくる。
英文素材と解説だけじゃない
さらに、本書の特徴として、空所補充の練習ページ CHECK UP が付属されている。
FOCUSで学んだ表現を練習する。
空所補充と言っても、書き込むわけではない。書き込んでしまったら、繰り返し練習できなくなる。
空所を見ながら、口頭で英語にしてみよう。日本語から英訳することになる。
スペルのヒントがあるので、負荷を少なくして、スピード感のある学習が可能だ。
最後にダイアログ全体の空所補充もある。
音声を聞いて、リピーティング(リテンション)してみよう。実力のある人は、すべての部分をディクテーションしてもいい。
こういった練習がページがついていることで、聞き流すような学習ではなく、主体的な学習に導かれる。
圧倒的な量に感銘を受ける
上記で紹介したのは、たった1つのレッスンだ。
これが52レッスン詰まっている。
52レッスンは6つの章に分かれている。
- ビジネスコミュニケーション入門
- 社外とのコミュニケーション
- 社内でのコミュニケーション
- 会議で使う言い回し
- 交渉で使う言い回し
- プレゼンテーションで使う言い回し
上記で紹介した「合意への障害を取り除く」レッスンは、第5章の「交渉で使う言い回し」の中にある。
圧倒される量である。分厚い本の中に小さいフォントでぎっしりと内容がつまっている。
1レッスンに、ダイアログ、フレーズ(+解説)、フレーズの空所補充、ダイアログの空所補充がすべてつまっていて、それが52もある。
NHKラジオ講座の「まとめ」だから出来る芸当で、普通だったらこれほどのコンテンツを1冊で提供する気になれないだろう。
ということで、本書は、質と量において完全に満足できる内容。
ハイレベル教材と承知して買うなら、失敗したと思う人は滅多にいないはずだ。
杉田氏の講座と比較して、本書の強みは・・・
本書は「ビジネス英会話」のまとめ教材なので、杉田氏の講座と比べてみたい。
まず、杉田氏の講座は「やさビジ」から20年続いている点に注意が必要だ。典型的なビジネスシーンを取り上げていたらすぐにネタ切れになってしまう。
そこで、杉田氏の講座は、ほぼ連続ドラマ化している。より自由奔放なビジネスディスカッションになっていて、それが人気の秘密だし、何年聞いても飽きない理由だ。
その点、日向氏の講座は単発だったので、もっとも典型的なビジネスシーンが採用されている。「出退勤時のあいさつ」「アポイント」「クレーム処理」「依頼と指示」・・・などなど。
つまり、率直にいうと、より効率的にビジネスシーンを学ぶなら、本書の方がおすすめかも知れない。
「即戦力がつく」という本書のタイトルも、杉田氏の講座を意識したうえで、強みを表現したのだろう。
本書を学んでから、杉田氏の講座を試してみてもいいだろう。杉田氏の講座もまとめ教材が出ていて、NHKのビジネス英語のページで紹介している。