究極の音読プログラム 初級コース

杉山式 究極の音読プログラム 初級コース

著者:杉山一志
出版:国際語学社
発行日:2013/4/25

タイトルは「音読プログラム」となっているが、構文解析やシャドーイングを組み合わせた学習法を提案。

音読だけを強調しているわけではなく、むしろシャドーイングのステップを反復する。

スラッシュ音読を組み合わせることで、優れた英語学習プログラムになっている。

完成度の高い学習プログラム

学習ステップは以下のようになる。同じ英文が4回掲載されて、以下のトレーニングを行う。

ステップ1 スロースピードリスニング

スロースピードの英語音声を聴きながら、わからない語句を確認する。

ステップ2 英文の文法解析

SVOCMに品詞分解された英文と文法解説。

見開きでステップ1とステップ2。右ページの文法解析ステップでは、品詞分解がされている。

ステップ3 スラッシュ音読

チャンク(意味の最小単位)ごとに区切って、内容を把握しながら音読。 チャンクごとの和訳をここで確認する。

スラッシュリーディングの練習をかねる。スラッシュごとに内容をイメージするのは有用。

音声はチャンクごとにポーズがある。チャンクごとのリピーティングをすることになる。

ステップ4 シャドーイングで反復練習

ナチュラルスピードのシャドーイング。ここで英語の思考回路を作る。

このパートを反復することになるので、ある意味でステップ1~3は準備といえるだろう。

ナチュラルスピードが難しい場合は、ステップ1のスロースピードの音源を使う。 また、シャドーイング自体が難しい場合は、テキストを見ながらオーバーラッピングをしてもよい。

(シャドーイングは難易度の高い学習なので、上記のようなガイドを掲載しているのは感心した)。

同じ英文をさらに2回載せて、ステップ3とステップ4をトレーニング。スラッシュ音読ステップは、英文にスラッシュが入れてある。

音読する前に文法解析

上記をみるとわかるように、実に完成度の高いプログラムになっている。

文法確認→音読→シャドーイング」という順序は、他の学習ガイドでも見られるものだが、本書では文法解析とスラッシュ音読に特徴がある。

文法解析のステップでは、英文をすべて品詞分解して、英文構造を理解する。著者は予備校講師なのだが、いかにも硬派な内容。

「英会話フレーズの覚えよう」という目的の音読ではなく、「本物の英語を身につけよう」という目的なら、文法解析を避けて通ることはできない。

ただし、本書で学習するなら、品詞分解された英文を見て面食らわない程度まで、5文型を学習していることが前提となる。各ステップが1ページにおさまっているので、苦手な人から見るとそっけない解説で不安になるはず。

(そういう人は構文学習を別に組み合わせよう。リーディング教材のページで、構文の教材を紹介しているので、そちらも参照)。

スラッシュ音読の意義は大きい

本書のもう一つの特徴は、スラッシュ音読にある。他の音読教材には見られないアプローチとなっている。

スラッシ音読とは、英文をスラッシュで区切って、スラッシュ単位で意味を把握する。要するに、スラッシュリーディングのことなのだが、それを声に出して「音読」する。

音読学習をやっている人の中には、普段からスラッシュを意識して、スラッシュ単位で内容を把握しながら声に出している人もいることだろう。ただし、本書で改めて「スラッシュ音読」として説明する意義は大きい

音読はただ声に出せばいいわけではなく、英文の内容をイメージしながら声に出すことがポイント。この点はシャドーイングも同じで、内容を把握しつつトレーニングすることで学習効果が高まる。

素材選びも上手い

最後に英文の内容について触れておきたい。

収録されている英文のレベルは、高校1年の教科書レベルだと思われる。タイトルに「初級」とあるが、おそらく大学受験を基準にしたときの初級といったイメージなのだろう。「英語初級」というと中学英語のレベルが想定されるが、それよりも一段階レベルが高い。

英文の内容は、大人の知的好奇心をそそる社会科学・雑学のテーマが多い。「人口の流動性」「学習の最終目標は?」「出生率はどこまであがる?」「アメリカのもうひとつの宗教」「未来を読み取る力」「講演会での戸惑い」など。

ありがちな英会話(ダイアログ)素材に飽きた人にとって、うれしいテーマ選びとなる。ただし、3センテンス程度の短い英文が多いので、内容の深さに期待しないこと。

本書は音読教材として、かなりお勧めの部類に入る。上記の解説で興味をもった人は試してみてほしい。

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