英語の新常識

英語の新常識

著者:杉田敏
出版:集英社インターナショナル
発行日:2022/2/7

「英語の変化」をテーマにした本。

社会の変化にともなって英語は変化している。昔使われていた英語が廃れ、新しい英語が常識となってきた。著者は、NHKビジネス英語講座でお馴染みの杉田敏氏。

知っておきたい情報であると同時に、刺激的で面白い。

1章でハードルが上がる

第1章は、「英語学習の心構え」。この章だけは英語学習の話。

語彙を増やすことを強く訴えている。英語力が一段上に行けない人に共通するのは語彙不足だという。

語彙が貧弱だと知的な会話はできませんし、英語を通じての知識の吸収も効率的に行えません。

著者の杉田氏は、NHKラジオの中で最難関のビジネス英語講座を担当していた。読者にも高いレベルの心構えを求めている。

この章で、本書のハードルを上げてしまった気がする。2章以降はどんな英語レベルの人でも楽しめる内容だったのだが。

英語の変化について縦横無尽に語る

2章以降は、英語の変化についてさまざまな話題が綴られている。さすがの杉田氏だけあって、引き出しが多い。

2章は「英語の新常識」。人種やジェンダーについて最新の常識を紹介している。

お馴染みの「OK」のジェスチャー。相手からみると「W」と「P」に見えるため、「white power の秘密のシンボル」を意図して、人種差別の表現として使う過激な人たちが出てきた。

誰でも知ってるジェスチャーが、危険なものになりつつあるという。いずれタブーになって使えなくなることだろう。

別の話題を紹介したい。第3章「消える言葉、生まれる言葉」から。

「高齢者」をどう表現するかについて、さまざまな見解が紹介されている。

日本語でも、「お年寄り」という言葉は、いかにも年寄り扱いしているようで避ける傾向がある。「高齢者」という言葉も、高齢世代全体を指すならいいが、個人を指して使うのは気が引ける。

高齢者をどう表現するかについて悩ましいところだ。この問題はどの国でもあるが、米国は特に気を使っているのがわかる。

英語で一般的な「senior citizen」はステレオタイプであるとして、older や matureという語を選ぶというNGOの意見が紹介されていた。

そして、中年以降の女性自身が好む表現は、”(a lady) of a certain age”だという。男性は”mature”。これは覚えておきたい。

などなど。ここで紹介してるのは、この項目の中のごく一部。短いページ数の中で、さまざまな情報が詰め込まれている。非常にためになる。

興味が付きない話題が山盛り

第4章「語法にも文法にも大きな変化が」にも興味深い話題があった。

中学校で習う定番の挨拶がある。How are you? I’m fine,thank you. And you? というあれ。この定番の挨拶が変化してきているという。

まずHow are you? に対して最も一般的な返答はFine.ではなく、I’m good.となりました。

I’m fine.は素っ気ない印象だという意見がある。20年ほど前から若者がI’m good.を使い始めて、今ではこちらが一般的になってしまったという。

ちなみに、別れの挨拶についても、Have a nice day.は最近使われなくなってしまったとある。

きりがないので、本書の紹介はこのあたりでやめるが、興味が尽きない内容だった。

英語も変化すると気付かされる

本書を読んでつくづく思ったのは、言葉は変化するということ。

日本語が変化するのは当たり前だと思っているが、なぜか外国語は変わらないような気がしていた。教科書で習った英語はずっと通用すると考えがちだ

当然ながら英語も変化する。本書を読むとこの事実に気付かされて、とても刺激を受けた。

最新のタブーについての情報も豊富なので、英語を使用する人はぜひ目を通してほしい。

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