ミニマムで学ぶ英語のことわざ

ミニマムで学ぶ 英語のことわざ

著者:北村孝一 /協力 Kristin Newton
出版:クレス出版
発行日:2017/2/25

英語のことわざを100個紹介。

1ページに1つのことわざを掲載して、「意味」「用法」「ポイント」「用例」を付記。

異文化の面白さが伝わってくる良書。

「ミニマム」とは何か

最初にタイトルの「ミニマムで学ぶ」について。

ことわざ研究者の間では、ネイティブが常識的に知っていて、よく使うことわざを「ミニマム」という。異文化理解の「最小限」という意味。

どのくらいの数かといえば、400のことわざを知っておくことが望ましいという。それによって、異文化理解の最小限が達成される。

とはいえ、ネイティブも子どもの頃から知っているわけでなく、生活の中で徐々に覚えていくわけだから、いきなり400のことわざを覚えようとしなくていい。

本書はミニマムの中から100個を厳選した。

文化の違いを楽しむ

ことわざは文化の違いが明確に出る。

The squeaky wheel gets the grease.
きしる車輪は油をさされる

車輪がギーギーと不快な音を出せば、潤滑油がさされる。不満があるときは、はっきり声を上げれば要求が届くという意味。おおむね肯定的な意味で使われるという。

日本の文化においては、不平不満を上げることは否定的なニュアンスがある。むしろ我慢することが奨励されがちだ。

米国では自分の意思を明確に示すことが奨励される。たった1つのことわざでも、こういった文化の違いを楽しめる。

(繰り返しになるが、本書に掲載されていることわざは、ネイティブなら常識的に知っているミニマムである)

ことわざの輸入

日本でもお馴染みのことわざが掲載されていた。

There’s no smoke without fire.
火のないところに煙は立たない

誰でも知っていることわざだと思う。

まったく同じことわざが米国にもあるのかと思ったら、実は幕末にオランダ語と英語から入ってきたものだという。西洋のことわざがすっかり日本に定着したことになる。

他にも、No news is good news.「便りがないのはよい便り」という有名なことわざも、明治後期に英語教育を通して定着したという。

「ことわざは古来からの言い伝え」という先入観があったが、短期間に定着したことわざがけっこうあることに驚かされた。

英語力の向上にも役立つ

ことわざは印象的なものばかりだから、簡単に覚えてしまう。英語のことわざをたくさん覚えておけば、英語力の向上に役立つはず。

It takes two to tango.
タンゴを踊るには二人いる

タンゴはパートナー同士が呼吸を合わせて踊る。恋人同士や夫婦の間の問題は、両方に責任があるという意味。

この英語フレーズは、It takes — to – 「-するには—がいる」という重要表現。これを覚えておけばどれほどの応用が効くだろうか。

他にも、以下のようなことわざがあった。

It’s no use crying over spilt milk.
こぼれたミルクを嘆いても仕方がない

日本でいえば「覆水盆に返らず」。(ちなみに、上記の英語のことわざは「嘆いてもしょうがない」ことに強調があり、漢文に由来する「覆水盆に返らず」は「元に戻らない」ことを強調しているから、同じ意味ではないという解説が本書にあった)

It is no use -ing「~しても無駄」
cry over 「~を嘆く」「~が原因で泣く」
spilt (spill 「こぼす、漏らす」の過去・過去分詞) spilt ~ 「こぼれた~」

ことわざ1つから多くを学べる。確実に応用が効く。

ことわざが好きなら、100の英語フレーズを楽しく暗記できるはず。英語力アップに有効だ。

ことわざ愛が伝わってくる

単にことわざを羅列したフレーズ集とは違って、本書はしっかりした解説がある。

ことわざへの愛が伝わってくるので、読んでいて楽しい。

著者の北村孝一氏は、ことわざの研究者で、ことわざ学会代表理事を務める。多数のことわざ関連書を編集・執筆している。「小学館 ことわざを知る辞典」(Amazon.co.jp)など。

ことわざに興味がある英語学習者に本書をお勧めしたい。

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