敬語の英語 実践編 著者:デイヴィッド・セイン 出版:ジャパンタイムズ 発行日:2007/4/24 |
丁寧英語の表現集。ビジネス編とプライベート編がある。
本書の特徴は、丁寧さの表現を3段階に分けて紹介していること。「とても丁寧に」「常識的に丁寧」「ずばり、言いたいこと」で掲載。
丁寧さの加減が違う類似表現を比較することで、それぞれの表現がリアルに浮かびあがる。
「英語の敬語表現」ジャンルの中で良書のひとつ。
敬語を学ぶ必要性が3段階から見えてくる
本書は、ビジネス編とプライベート編の敬語を紹介している。
ビジネス編の「急ぎの仕事を頼む」敬語表現を見てみよう。
それぞれの表現には解説がついていて、より深く理解できる。
I’m terribly sorry, but could I ask you to work on this?
これはいかにも丁寧な表現だ。目上の人とか多忙な人に頼むときの表現だという。
Could you work on this?
これはビジネスライクだという。相手は断りやすいという指摘もある。
そして、3つめの表現。
I’d like you to work on this.
この表現は、相手が断らないことを想定した依頼表現で、命令調だという。上司が部下にいうとしたら、丁寧な表現となる。If you have time,をつければさらに丁寧。
さらに解説には以下の注意点も。
I want you to work on this.
これは強い命令調だという。
このように解説が各表現についているので理解がしやすい。本書の学習効果は非常に高い。
それにしても、一番失礼になる I want you to~が、中学英語で一番最初に学ぶ表現なのだ。
敬語の英語をしっかり勉強しないと、実際の英会話でぶっきらぼうな印象を与えてしまうことだろう。
プライベート表現でも中学英語のリスクが明白
プライベート編からも1項目紹介したい。
「食事の提案をする」表現。
相手に決定をゆだねる表現と、自分の希望をやや強く出した表現が、丁寧な表現として紹介されている。
そして3つの表現。
Let’s eat Italian.
この表現は、自分で決めたことを相手に伝える言い方だという。わがままな印象を伝える。
考えてみれば当然で、相手の希望も聞かず、自分の希望も伝えず、「さあ、イタリアンにいこう」ではいかにもわがままだ。
そして、ここでもやはり日本で最初に学ぶ表現が一番失礼になる Let’s なのである。
3段階の表現を比較するからこそ、こういった簡単な表現のリスクに気づくことができる。
敬語の表現を知りたい状況
ということで、本書の「丁寧さ別3段階」の切り口はなかなか面白かった。
著者のディビッド・セイン氏は多数の英語教材を執筆しているが、どれも良書といえる高水準な教材ばかりなので安心感がある。
(似たテーマで何冊も書いているため、すでに著者の本を持っている人は承知した上で購入しよう)
本書でとりあげる各シーンが非常に練られているのも注目ポイント。
いくつかピックアップすると、「相手の誤解を解く」「キャンセルの理由を聞く」「遅刻した相手にひとこと」「もらったメールの用件があいまいでわかりにくい」「相手の体調を気遣う」「失礼な質問をされた」などなど。
ビジネス編もプライベート編も3段階の表現を知っておきたい状況ばかりである。
結論として、本書もやっぱりディビッド・セイン風の良書といえる。
このタイプの英語教材は、できれば趣味として気楽に親しんでおきたいところ。丸暗記してもはじまらないが、実際の英会話をやったときに「読んでおいて良かった」と思うことは間違いない。