読むための辞書
英語の辞書といえば、オンライン(無料)の辞書サイトがたくさんある。検索すると即座に項目が出てくるし、同義語、反意語もクリック1つで再検索できる。発音を音声で聞くことができる。
もはや「紙の辞書」に勝ち目はないようだが、紙の辞書が得意とする部分もある。それはソファに寝転がって「読む」のに適していること。辞書を引くのではなく、パラパラと読むなら、紙の辞書を用意したい。
ということで、このページでは、読む英英辞典としてお勧めのコリンズ・コウビルド英英辞書を紹介したい。
→ Collins コウビルド英英辞典(Amazon.co.jp)
文定義というイノベーション
コウビルドは中級程度の学習者にお勧めの辞書。
なぜお勧めかといえば、「文定義」という独特の編集方針にある。
文定義とは「文章による単語の定義(語義)」のこと。
具体例で見るとわかりやすい。
adapt「適応する」(自動詞)をロングマンとコウビルドで比較する。
<ロングマン(Longman Dictionary of Contemporary English)>
————-
intransitive and transitive ← 動詞型
to gradually change your behaviour and attitudes in order to be successful in a new situation ← 語義
adapt to ← 定型
The children are finding it hard to adapt to the new school. ←用例
————-
語法が明確になっていて辞書らしい編集だが、いささか煩雑でもある。では、コウビルドはどうなっているだろうか。
<コウビルド(Collins Cobuild Learner’s Dictionary)>
————-
If you adapt to a new situation, you change your ideas or behaviour in order to deal with it successfully. ←文定義。
We will have to be prepared to adapt to the change… ←用例
————-
定義+用例という二段階だけ。実にシンプルな表示になっていて、すらすら読むことができる。
定義(単語の意味)の部分が、普通の文章になっている。誰かに adapt の意味を聞いたときに、口頭で教えてもらったような英語である。
ポイントは、文定義の中に語法の解説が含まれていること。その定義文を見るだけで、動詞型の区別、どのような前置詞が続くか、どのような概念の名詞に用いられるかまで自然と身に付くようになっている。
オックスフォードやロングマンなどの名門辞書も文定義の威力を認め、一部の単語では文定義を導入することになった。(コウビルドでは全単語を文定義にしている)。
コウビルドの辞書は、そのシンプルな作りもあってユーザーの記憶に残りやすい。そのため、外国人やネイティブ児童の学習辞典として利用されることが多いという。
知っている単語を読む
ところで、英英辞典をどのように使ったら良いだろうか。「知らない単語の意味を調べる」という一般的な辞書の使い方は、あまりお勧めできない。
まったく未知の単語を英英辞典で引くと、その概念を明確に掴むことができず、わかったようなわからないような漠然とした感覚となってしまう。
むしろ、知っている単語について、「その単語をどのように説明しているか」を読むようにしたい。上記の例なら、adaptが「適応する」という意味だと知っている人が、「自分は英語でadaptの意味を説明できるだろうか?」と考えながら英英辞典を読む。
すると、英語で何かを説明するための「発信型の英語力」をつけることができる。このポイントは、「英語辞書力を鍛える」「こんなこともできる英英辞典活用マニュアル」でも解説されている。
英英辞典は優れた多読素材なので、中級レベル程度の方はぜひ試してみて欲しい。