五文型の底力

基本文法の盲点が見つかる

本書は5文型に特化した文法ガイド。英文法の「基本中の基本」である5文型について、あらゆる角度からマスターする。

以前、同じ著者の「関係詞の底力」をレビューしたが、そちらも良書だった。

本書では5文型のあらゆる論点を網羅的に解説しているので、はじめて5文型を学ぶ人向きではない。5文型を一通り学んだ人が、より一層のブラッシュアップのために読むのが適している。

5文型がわかっている人にとっては易しいページも多いが、易しい部分は斜め読みしながら、理解があやふやな項目だけを重点的に読んでみよう。

内容は易しいとしても、とにかく細かい。それは重箱の隅をつつくような細かさではなくて、大切な部分の盲点ばかり。「自分はこんな基本があやふやだったのか!」と驚くことだろう。

今、あえて五文型を学びなおす

ご存知の方が多いと思うが、5文型とは何かについて簡単におさらいしておこう。

いかなる言語であっても、文というのは、いくつかの単語で成り立っている。文を理解するためには、各単語の関係(主語なのか目的語なのか)を知っている必要がある。

たとえば、以下の3つの単語からなる文章があるとしよう。

(犬) (私) (噛む)

このままでは、噛んだのはどちらかわからない。文と単語の関係を決めなくてはならない。

日本語では、単語に助詞(「てにをは」)をつけることで、関係を決めている。

あの犬噛んだ。

そのため、単語の語順を変えても、意味が通る。

あの犬が私を噛んだ。→ 私をあの犬が噛んだ。

英語には助詞がない。では、どうやって関係を決めているだろうか。英語では語順ですべてが決まっている

The dog bit me. → I bit the dog.
(語順を変えると意味が変ってしまう)

ということで、英語の文章を理解するためには、語順のルールをおさえておく必要がある。

そして、英語の語順は5つにパターンに集約できる。それが5文型であり、英文を理解するうえで、絶対に欠かすことのできない大原則といえる。

解説してほしいことが解説されている

本書を一通り読んで思ったのは、解説が実に見事だということ。学校や予備校で5文型を学んだとき、学生が疑問に思っても教師がスルーしたことを本書は解説している。

たとえば、次のようなこと。

第4文型(SVOO)で、二重目的語を取れそうなのに取れない動詞がある。

tell , show は、He told me the ending of the movie.のように二重目的語をとれる。

しかし、explain, say, suggest, proveのような動詞は、日本語の感覚では、二重目的語をとってもよさそうなのに、取ることができない。(前置詞が必要になる)

こういった違いについて、多くの学生は「なんで?」と疑問に思ったはずなのだ。しかし、通常は、「そういうものだ」でスルーしてしまう。

語学というのは、疑問に思っても、まったく説明がなくて丸暗記しなければならないケースが多い。「この動詞は二重目的語をとる」「この動詞は二重目的語を取らない」。その丸暗記の繰り返し。こんなことを続けているうちに英語が嫌になってしまった人も多いはずだ。

しかし、本書は違う。学習者の疑問「なぜ二重目的語を取れる動詞と取れない動詞があるのか」にたいして応えている。

その違いは、英語の起源(ゲルマン系とラテン系)に理由があるという。ゲルマン系の動詞(give, tell, teach)は歴史的に二重目的語をとっていた。それにたいして、ラテン語、フランス語系の動詞(explain, suggest, introduce, describe)はSVY+to +Xの形をとった。

意味的な面から考えると、ゲルマン系の動詞は、「相手に伝えること」を重視していて、ラテン系は「情報そのものを伝える」ことを重視しているという。ラテン系は、相手に(本当に)伝わったか、誰に伝えたかではなく、「情報を伝えることに」に重点があるため、to +(人)の部分がなくても文として成立する。

上記は簡単に要約したものだが、このように説明されれば、納得感を持ちながら学習できる

もちろん、ゲルマン系ラテン系といった解説は、興味のない人もいるだろう。(そもそもネイティブだって知らないこと)

重要なのは、疑問に思ったことに解説があるという事実である。それによって不毛な丸暗記のイメージが払拭されるからだ。

そのほかにも、たとえば「なぜ英語で無生物主語が好まれるのか」という内容はどうだろうか。

もともと日本語には無生物主語はなかったという。明治以降の日本語は、翻訳文の影響で無生物主語が増えてきたらしいが、今でも不自然に感じる人の方が多いはず。

無生物主語とは、たとえば以下のような文章。

「この薬は、あなたの気分を良くするでしょう」

英語で無生物主語が多用されることについて、驚いたことはないだろうか。「なんで、こんな文章にするのか?」と疑問に思ったことはないだろうか。

英語で無生物主語が好まれるのは、論理関係が明確になるからだという。無生物を主語にしなくても、英語の文章はいくらでも作れる。しかし、無生物にした方が論理的なのだ。

「あなたがこの薬を飲めば、あなたの気分は良くなるでしょう」

「この薬は、あなたの気分を良くするでしょう」

無生物主語は、「主語」と「目的語」の関係に「原因」と「結果」が対応する。因果関係を強く明示することになるので、英語では無生物主語が多用されるようになった。

そう説明されれば「納得」できる。無生物主語の文章を読んでいるときの「違和感」は、説明された後に消え去っているはずだ。

本書のような「暗記ではなく理解を重視した教材」と出会えば、英語に興味を持つ人は増える。そして、理解を重視した解説が書けるのは、実力のある著者だけである

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