総合英文読解ゼミ: 高校英語 著者:山口 俊治 出版:語学春秋社 発行日:1997/05 |
英語の構文を基礎から学習する本。5文型を中心にあらゆる構文を200パターンで解説している。
著者の山口俊治氏は、「山口英文法講義の実況中継」でも知られる人気講師。わかりやすい解説に定評がある。
基礎レベルの手堅い構文教材
書名の副題に「高校英語」とあるが、受験を意識したような部分はまったくなくて、構文教材としてニュートラルな教材になっている。
社会人の中には、「高校」とか「中学」など自分の属性とは違うタイトルがつくと敬遠する人が少なくない。しかし、良書は良書なので気にしない方がいい。仮に「社会人のための」とタイトルがあったところで、ダメな教材はやっぱりダメなのだ。
本書のレベルは高校の初級程度。中学英語を一通り終えた人が、リーディングのための構文分析力をつける教材として最適だと思われる。
文法教材のForestを学習している人は、次の教材として本書を検討してほしい。セットで取り組むと学習効果が高いはずだ。
品詞分解はシンプル
本書の特徴は、シンプルに1つ1つの構文を解説していること。各項目で2つ前後の例文を出す。それをSVOCおよびM(修飾語句)で品詞分解し、構文を丁寧に解説している。
品詞分解もシンプルなのがいい。修飾語句はカッコで括る程度にとどめている。すべての修飾語と被修飾語を矢印で示すと、スパゲッティのように混雑することになるため、書籍教材はこのくらい簡素な方がわかりやすい。
また、掲載されている例文もシンプルな英語ばかりで好感がもてる。実用英語のために学習する社会人に向いている。
構文解析力はリーディングの基礎
英文読解(=構文解析)の教材は、社会人を対象にしたものがほとんどない。構文の勉強は学生時代にやることなので、需要が少ないと考えられているのだろう。
しかし、構文学習を必要とする社会人は多い。メールにしてもWEBにしても、英語の読み書きスキルの要請が高まっているからだ。
英文をより速く、より正しく読むためには、構文力は欠かせない。そして、5文型をはじめとする構文力が身に付いているからこそ、リーディングのたびに実力が向上するようになる。
そして、英語のリーディングに自信のない人は、本書を一通り学習することで英文の構造がつかめるようになる。
予備校の受験教材をお勧めしない理由
アマゾンで「英語 構文」の教材を探すと、予備校講師による大学受験用の教材がヒットする。それらの教材には熱狂的な支持者がいて、レビュー評価が高いことも多い。
しかし、実際に読んでみると、「学生時代はこんな教材をやっていたっけ?」というようなガッカリ感をもつはずだ。
それらの教材は「受験用」だけあって、「問題を解く」「正解にたどり着く」ことを目的とした編集になっている。シンプルに済ませられる内容をあまりに細かく解説するような本ばかりで、実用英語を学びたい社会人にはモチベーションが維持できない内容なのだ。
グロービッシュで説明したように、外国語の知識にエネルギーをつぎ込みすぎると、投資効率が落ちる。ほとんど社会人にとっては、受験教材は適切な選択ではないだろう。