基本文法から学ぶ 英語リーディング教本 著者:薬袋善郎 出版:研究社 発行日:2021/11/22 |
リーディング教材で著名な薬袋善郎氏の著書。
英文法の基礎に戻って、いちから品詞分解を解説する。
3ヶ月真剣に努力すれば、英文を正しく理解できるようになる。
類書がない品詞分解本
品詞分解とは、英文の主語はどこか、動詞の文型はなにか、目的語はどこか、修飾関係はどうなっているかを明確にすること。
つまり「品詞の働きと活用の相互関係」を理解すること。品詞分解が正しくできてこそ、英文を正しく読めるようになる。
真面目な予備校の授業では、すべての英文にたいして品詞分解を執拗に繰り返す。(手抜きの授業では、英文を和訳するだけになる)
品詞分解をテーマにした一般の英語教材はほとんどない。非常に硬派な内容なので、需要が限られているからだろうか。
本書には、「英文を正しく読めるように」という著者の情熱が込められている。
一文一文丁寧に解説
本書は、中1で学ぶような基礎から、じっくりと品詞分解を解説している。
それこそ、「品詞とはなにか」からはじまって、「名詞」「動詞」「形容詞」といった用語の解説から。文法用語が曖昧な人でも、最初からしっかり学べる。
そして、各文法項目は、例文をすべて品詞分解して、丁寧に解説している。
上記画像は、不定詞副詞用法の解説。
各項目ごとにいくつかの例文が登場し、一つ一つ丁寧な解説がある。
品詞分解のやり方については、各講師で多少の個性がある。薬袋氏は徹底して一単語ずつ詳細に分解する。
His salary was not adequate to support his family.
この例文の His salary とか his family という部分で、所有格 his でさえ矢印で関係を示す。
そこまで細かく図示しないほうが、英文の大きな構造がわかりやすくなるのだが、一語たりとも軽視せずに品詞分解するのが薬袋氏の持ち味。
これだけ細かく図示されていると、大雑把に読む癖を直すことにつながる。
ゆっくり学ぶことを推奨
本書の最初に重要な注意書きがある。「勝手に飛ばしたりしないで、前から順番に読んでください」と。
飛ばし読みしてしまうと、文法用語の理解があやふやになり、簡単なことさえ難しく感じてしまう。時間がかかっても、前から順番に理解していこう。
ただし、英文法をはじめて学ぶ人にとっては、本書は細かすぎるので適していない。
一通り英文法を学んだ上で、英文の品詞分解に力を入れたい人に向いている。中学英語を学んだ高校生にもっとも適していそうだ。リーディングに力を入れたい社会人にもおすすめしたい。
テキストの限界は承知しておこう
テキスト教材では品詞分解の結果が一気に示される。そのため、ひとつひとつの英単語に注意しながら根気強く読み進める必要がある。
講師がマジックボードで順を追って品詞分解してくれれば、ただ眺めているような受動的な学習でも理解がどんどん進むのだが・・・。テキストだけで品詞分解を学ぶのは、けっこう忍耐力を必要とする。
こればかりはテキストの限界なのでしょうがない。
それと、本書は英文にカタカナ発音のルビがふってある。音声が付いてないのだった。ローマ字読みにならないようにという配慮らしいが、音声は付けるべきだった。
旅行英会話のようなカジュアルな教材であれば発音ルビがあってもいいが、本書のような真面目な教材には相応しくない。
これらのマイナスポイントはあるものの、本書は学習効果のある教材であることに違いはない。