駆け引きを有利に進めるビジネス英語 著者:法島 由昭 出版:三修社 発行日:2008/11/26 |
著者は14年以上の海外駐在経験があり、住友商事時代に「1日平均10件以上のビジネス交渉をこなした」というビジネス英語交渉のプロ。
学校で習うような知識ではなく、実体験から得た賢明さ(street-smart)がビジネス英語交渉には求められる。
「駆け引き」のタイトルに偽りなし
本書の内容は、通常のビジネス英語教材では見かけない切り口になっている。
姿勢を探る、譲歩を引き出す、けん制する、ハッタリ、質問から逃げる、条件を棚上げする、代案でこちらのペースに引き込む、など。
本書で学ぶ表現をいくつか見てみよう。
(「スマートに探りを入れる」の章)
What do you think about your offer?
貴社のオファーについて、ご自身はどうお考えですか?
↑相手の本心を探る上で、実にスマートな表現。日本語の交渉でも使える。
(「希望価格を探り出す」の章)
I know it’s tough for you but what if we ask you to be a little bit flexible in your pricing?
難しいお願いだとは思いますが、価格面で弾力的に対応していただけませんか?
↑単に値切ったり、こちらから価格を提示せず、婉曲的に探りを入れている。
(「けん制で流れを有利にする」の章)
That’s your wishful thinking. You’d better remember that we have so many possible buyers.
そりゃ考えが甘いよ。ほかにも買い手は大勢いるんだよ。
↑「買い手は大勢いる」はけん制の定番。
(「予想外の質問をかわす」の章)
Off the top of my head, I believe it was 300 dollars per piece.
うろ覚えですが、あれは1個あたり300ドルだったと思います。
↑質問されて「わかりません」と言えない状況は多い。うろ覚えですが、当てずっぽうですが、といった予防線を張る表現も知っておきたい。
(「ここだけの話をちらつかせる」の章)
This is for your ears only.
あなたの耳にだけ入れておきます。
↑「ここだけの秘密」はベタだけど効果的。
なお、上記では表現だけを引用したが、本書では解説の中に英語表現を混ぜてあるので、読み物として楽しめるようになっている。もともとJETROのメルマガだったという。
相手の駆け引きを見抜く
駆け引きの英語は、自分が使うための表現にとどまらない。相手の駆け引きを見抜くのに役立つはずだ。
“This is for your ears only. 「ここだけの話」” と真顔で言われたときに、日本語だったら真に受ける人はいないだろう。しかし、英語(外国語)だとなぜか警戒心が働かないことがありえる。
日本人はビジネス交渉でカモにされることが多いというが、日本語だったらタフな交渉ができる人でも、英語になった途端にナイーブになっていないだろうか。
本書を読んでおけば、その表現が出てきたときに「ここだけの話をちらつかせて、交渉を有利にしたいんだな」とすぐにわかる。相手の思惑を推し量る点でも、本書は役立つことだろう。