ビジネス英語の鬼100則 著者:上田 怜奈 出版:明日香出版社 発行日:2022/10/26 |
ビジネス英語について「100の切り口」で学習する。大ボリュームの1冊。
英会話例の音声はDL可能。スマホアプリにもパソコンにも対応。(契約書等の書式のDLもある)
あらゆるテーマを盛り込んだ理由
本書の特徴は、あらゆるテーマを盛り込んでいること。
ビジネスシーンの英会話だけでなく、プレゼン、交渉、契約書、会計、ミーティング、面接など、ありとあらゆるビジネステーマについて取り上げている。
目次は以下の通り。
第1章 信頼を勝ち取る自己紹介(スモールトークから電話まである)
第2章 反応がもらえるライティング(Eメールだけでなく、マーケティングコピーもある)
第3章 心と記憶に残るプレゼン
第4章 納得感のある価格・条件交渉
第5章 商談で外せない契約書の確認
第6章 ビジネスパーソン必須の会計英語(数字に関わる英語)
第7章 やる気を引き出す部下の褒め方叱り方
第8章 スムーズなチームワーク(ミーティングの英語)
第9章 キャリアアップとソーシャルメディア(面接など)
第10章 ビジネスプランの描き方
本来、それぞれのテーマで1冊の本になるわけだが、このように多くのテーマを少しずつ1冊に盛り込むことにどのような狙いがあるのだろうか?
「まえがき」に以下の文章があった。
本書は、英語での仕事や事業を自分で一通り回すのに、全体を見渡せて、ある程度テンプレートのようにして使える、英語ビジネス版「虎の巻」のようなものがあればなあと思い、執筆開始に至りました。
要するに、「ビジネス英会話」「ビジネスEメール」「プレゼン英語」など、各テーマをじっくり学習するための教材ではない。
ビジネスに関わる英語の全体像が見渡せて、必要な部分を抜き出して、そのまま使える「虎の巻」というわけだ。
独特の切り口とビジネスTIP
本書は「鬼100則」ということで100の項目が掲載されているが、どれも切り口がいい。
たとえば、「第4章 納得感のある価格・条件交渉」の「譲歩できる範囲について伝える」の項目。
議論が膠着したときに、譲歩することで違う角度から提案するときの英語表現。
“In that case, how about this?”「これではどうでしょう?」を使ったセンテンスからはじまる。
その後、別パターンで、御礼を述べて逆提案する。そして、相手の懸念を加味した上での提案。
次のページでは、「とりいそぎ1年間」など期限付きで折り合いをつける。などなど。
単に英語表現と会話例を挙げているだけでなく、項目の切り口そのものがビジネス交渉のノウハウになっている。
数字の英語も手厚い
著者の上田玲奈さんは米国公認会計士であり、数字の英語についてのテーマが手厚かった。
「第6章 ビジネスパーソン必須の会計英語」では、「負債や資本調達の状況について説明する」「原価計算」といった項目が並ぶ。ありがちなビジネス英会話教材にはないテーマだ。
「外注か内製化か」といったテーマもあった。
この項目では、おもちゃ製造を事例にして、「外注すべきか内製化するかについてのディスカッション」が掲載されている。
具体的なコスト計算もされていて、最後には両方のコスト比較が表になっている。
マンネリ感がないから通して学びたい
本書は100項目がそれぞれ面白い切り口で書かれているので、マンネリ感がない。
仮に「英語の交渉」をテーマにした分厚い本を一冊学習するとしたら、途中で飽きるはずだ。そういう専門書こそ、必要な部分を抜き出す「虎の巻」とすべきかもしれない。
逆に、本書のように多様なテーマを盛り込んだ教材は、最初から最後まで一通り学習するのに向いているのではないか。ビジネス英語の全体像を見渡せるので、その後の学習方針を立てやすくなる。
本書は、ビジネス英語を学ぶ人におすすめできる好著だった。