トレーニング概要
ライティングトレーニングは以下の5タイプに分類することができる。
(1)書き写す(書写/筆写)
英文を書き写すトレーニングは、最近注目されている。書き写す過程で多くの発見があり、簡単なトレーニングの割には学習効果が高い。
単語毎にノートに書き写すようでは効果がない。文節やチャンク単位、あるいは一文単位で書き写すようにする。
- 意味上の固まりごとに書き写す → スラッシュ・ライティング
- 一文単位で書き写す → センテンス・ライティング
自分が同じ内容を書くとしたらこの表現が使えるだろうか、というように考えながら学習する点がポイント。筆写する過程で自らの学習テーマを発見していく姿勢が求められる。
模範となる英文は、物語やエッセイなどの簡単な洋書を用意してもいいし、あるいは現在使っている英語教材の英文を使うこともできる。初級者はリピーティングとセットで行うようにしたい。日々の英語学習において、筆写トレーニングを最初に行うようにすると集中力も増す。
(2)暗写
英文を見ながら書き写す(1)の書写にたいして、暗写は英文を見ないで暗記して書く。英語が飛躍するレッスンなどで提案されている学習法。
5行程度の英文を完全に暗記して、何も見ないでその文章を書けるようにする。このトレーニングは、英作文ではない点に注意が必要。和訳があって、そこから英語を書くのではない。英語そのものを丸暗記しておくのである。
使用する英文は学習済みでマスターしたものを使う。(文法・語彙などの疑問点はすべて解決済みで、しかも音読などを通して自分の体に染み付いている英文)
このようにして空で書ける英文というのは、完全に自分のものになっている英語といえる。文章の一部分を変えれば、自分の英語として自在に発信できる。その場合には、暗記している元の英語があるだけに、正しい英語として自信をもって発信できる。
ちなみに、永久に(死ぬまで)丸暗記している必要はない。少なくとも一時期において暗記できるほど確実に学習するのが肝である。この積み重ねによって力が付く。
下記の(4)フリーライティングや(5)コミュニケーションにおいても、この暗写によって多くの英文をものにしておけばスムーズにできるようになる。
(3)要約
要約は、長い文章を決められた分量にまとめるトレーニング。英文の内容を徹底的に考えることになるので、いわゆる「英語で考えるトレーニング」となる。厳密な内容把握を要求されるため負荷が大きいが、学習効果は非常に高い。
原文を引用したり、可能であれば的確な表現を加えても良い。重要な内容が欠落していないか、論理展開は間違っていないか、印象が異なってしまっていないかなどに注意する。素材となる英文は、簡単で長い文章からはじめる。
また、作者が伝えたい部分に注目するのではなく、自分にとって面白い部分だけをメモする手法もある。(ネタの仕入れという感覚)。英文をただ抜き出すのではなく、面白いと感じた部分を自分なりにまとめることで「要約」となる。気軽にできるので、まずこの手法からはじめてもよい。リプロダクションの項目も参照。
1「書写」と2「暗写」と3「要約」は、自分で一から文を考えるフリーライティングに比べると、原文が用意されているので取り組みやすい。
また、フリーライティングでは自分の英語レベルに応じた稚拙な文章になりがちだが、原文のある筆写/要約ではレベルの高い文章を用意することができるためインプット学習の要素を持ち込むことができる。
(4)フリーライティング(日記/エッセイ/ワンテーマ)
フリーライティングはライティングのコアトレーニングといえる。自分で一から文章を考えなくてはならないので負荷が大きい。ただし、簡単な日記を英語で書く程度であれば、初中級の方でも取り組みやすい。書く内容がみつけやすいし、比較的簡単な英語でも表現できるからである。
最初のうちはあまり欲張らずに1日の行動を羅列するぐらいでよい。「朝食はパンとコーヒーだった」「バスに乗り遅れた」、、、など、小さな日常経験を英語で蓄積していくと、気付いたときには格段に英語力がついている。最初は辞書や参考書を引きながらでもよい。また、少し余裕ができたら、自分の見解や感慨を含めて自由に書いてみよう。
英語で日記をつける学習については、別ページで詳しく解説。
→英語で日記をつける
中級程度の方は、ひとつのテーマについて継続的に書いてみよう。映画の感想でもいいし、スポーツの評論でも、ニュースの分析でもいい。興味のあるテーマについて書きつづければ、書く内容が深まっていくのを発見できる。ワンテーマ方式の多読トレーニングと組み合わせるのが効果的。
(5)コミュニケーション
自分で書いて終わるライティングではなく、文章を通じたコミュニケーションを行う。特に上級者の方は積極的に海外の人と交流してみよう。
海外版のブログ・ポータルの掲示板・チャット・SNSなどネットを通じた手段がたくさんあるし、Eメールなどを通じた文通という方法もある。
内容についても、ビジネスの同業者との意見交換、日本の文化の紹介、国際問題などについての意見交換など、自分の興味と英語力に合わせて選択してみよう。
コミュニケーション型のライティングでは相手が存在する。他者が入り込む英語学習というのは、張り合いがあるし学習効果も高い。上級者は積極的にコミュニケーションの場を確保しよう。(コミュニケーションだけにスラングや口語調の崩れた表現も多々あるので、その点は注意する)。
ライティング学習のメリット
ライティング(アウトプット)できる英語というのは、本当の意味で身に付いている英語である。インプット学習で蓄積した英語力は潜在的なものでしかない。ライティングのようなアウトプット学習によって実際に使える英語力となる。
ライティング学習のポイント
1.完全主義から脱却
完璧な英語にこだわる人は、常に正解がほしくなる。そのため、正解が得られないアウトプット型のトレーニングを避けるようになり、結果として英語力が伸び悩むことになる。正解を喜ぶのではなく、表現する行為そのものを楽しむという方向に意識を変化させる必要がある。
2.書きっぱなしでOK
フリーライティングでは、自分で書いた英文がどれほど間違っていようと、そのまま書きっぱなしでよい。後々、英語力の向上とともに間違いが発見できるようになってから直せばよいのである。そのときには自分の実力向上を実感できるので、自信にもなるだろう。ただし、講師に添削してもらうタイプのトレーニングの場合にはこの限りではない。
3.「書けない内容は書かない」を基本にして時々「背伸び」
日本文を翻訳するようなライティング学習では意味がない。現在もっている実力を実践できるようにする、というのがアウトプットの基本である。稚拙な文しか英語で書けないとしたら、それが自分の実力なのである。そこからスタートするしかない。
ただし、多少背伸びして書くことで実力が向上する側面もある。稚拙な文章を書いて満足するのではなく、ときには明快な文章を書くためのライティング教材に当たってみたり、辞書を利用するのもいいだろう。
4.これを英語で何というのだろう?という好奇心を大切に
最初に英語教材があって「さあ覚えましょう」というのがインプット学習だとしたら、「これを英語で何というのだろう?」という自分の好奇心からスタートするのがライティング(アウトプット)学習である。学習者のタイプによってはライティング学習によって英語力が急上昇することがある。
5.アウトプットが前提
ライティングなどのアウトプットをしていると、自分の表現したい内容が英語で書けずに欲求不満がたまる。この感覚があるからこそ、通常の英語学習であるインプット学習に熱が入る。
インプットをしてから余力を使ってアウトプットするのではない。まず最初にアウトプットの場があるからこそ、貴重な時間を使ってでも英語学習がしたくなるのである。つまり、アウトプットとは、英語学習の理由そのものである。
教材例
注)ライティング学習は必ずしも専用の英語教材が必要なわけではありません。 以下は参考まで。
英文スタイル、英文の洗練、パラグラフライティング、発想転換など。