真・英文法大全 著者:関 正生 出版:KADOKAWA 発行日:2022/3/30 |
人気講師、関正生氏による英文法ガイド。
英文法の真実を明確に伝えることが狙い。
900ページを超える大著だが、文章が読みやすい。最後まで通読可能。
流れるような解説と納得感
本書は一度読み始めると、次々と読み続けてしまう。参考書のように分厚くても苦ではない。
その理由は、わかりやすい解説が次々に展開されていくからだと思う。
たとえば、現在完了の項目。
最初に、現在完了形は日本語にはない時制だと告げる。
そのことは英文を和訳するとわかる。
I lost my keys. / I have lost my keys.
この2つは、中学校の授業だと「私はカギをなくした」「私はカギをなくしてしまった」と訳し分けるように言われたはずだが、この2つの日本語にたいした違いはない。
つまり、日本語にはない時制なんだから、和訳で考えてはダメなのだ。イメージで考えなくてはならない。
現在完了形は「過去にした・・・で、今は?」を伝える。今に意識を向けることが大切。
ここまでがイントロダクション。
そして次のページから、現在完了形の解説に入る。
現在完了形の重点は「現在」にあり、過去から現在への矢印のイメージをつかむことが大切。
それを言葉で説明するなら、「継続/完了・結果/経験」となる。どの用法でも矢印のゾーンに収まる。
その後、過去完了形や未来完了形の解説に入る。「現在完了」「過去完了」「未来完了」は苦手としている人が多いはずだが、重点がどこにあるのか矢印を動かしてみるとよくわかる。
このように、英文法の本質を伝えようとする工夫があって、1ページ1ページ納得感がある。同時に、解説が流れるように展開されていく。
予備校の人気講師の授業はこのようなものだったと思い出した。
読みやすさの秘密はどこにあるのか
アマゾンレビューを読むと、本書の読みやすさが高く評価されている。
語りかけるような口語体で書かれているわけだが、読みやすさの秘密は文体だけではなさそうだ。
実際、口語体の教材は多いが、だからといって読みやすいとは限らない。
読みやすい文章は、読者の心の動きを先読みしている。「この部分で読者はどんな疑問を持つか」がわかっていて、それを先回りして書いている。
つまり、よくある文法書のように、英文法の体系が最初にあって、それを片っ端から説明するのではない。あくまで読者の意識にフォーカスして書かれている。
関正生氏の「世界一わかりやすい英文法の授業」をかつてレビューしたが、こちらも読みやすい英語教材だった。
本書は、英文法に本気で取り組みたい社会人・学生におすすめ。900ページを超える分厚さだが、英文法が苦手な人でも大丈夫だ。