改訂版 CD3枚付 英語で聴く 世界を変えた感動の名スピーチ 著者:平野 次郎, 鈴木健士 (その他) 出版:KADOKAWA/中経出版 発行日:改訂版 (2014/12/11) |
著名人17名の英語スピーチを収録した書籍。
歴史的な名スピーチが収録されている。音声もCD3枚の大ボリューム。
スピーチの背景解説もある。
収録されているスピーチ一覧
本書に収録されているスピーチを順番に紹介したい。
- マララ・ユスフザイ :国連演説★
- アウンサン・スーチー :ノーベル平和賞受賞記念講演★
- ネルソン・マンデラ :釈放後初の演説★
- バラク・オバマ大統領 :就任演説★
- ヨハネ・パウロ2世 :エルサレムでの演説
- ミハイル・ゴルバチョフ大統領 :辞任演説
- マザー・テレサ :ノーベル平和賞受賞記念講演
- マーティン・ルーサー・キング牧師 :ワシントン大行進演説★
- ジョン・F・ケネディ大統領 :就任演説★
- ウィンストン・チャーチル :鉄のカーテン演説(一部略)★
- アルベルト・アインシュタイン :平和に関する講演★
- マハトマ・ガンジー :(英国よ)インドを立ち去れ演説
- フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領 :就任演説★
- ヘレン・ケラー :米国聴覚障碍者言語指導促進協会での演説
- エイブラハム・リンカーン大統領 :ゲティスバーグ演説
- カール・マルクス :自由貿易に関する演説(一部略)
- ナポレオン・ボナパルト :ケラスコ本営の演説
★印のスピーチは、本人の肉声で収録されている。
政治分野のスピーチが多いが、どれも歴史に残るものばかり。
心に訴えかける内容、そして解説
本書の中から一部を紹介したい。
マララ・ユスフザイさんの国連演説から。
Dear sisters and brothers, we realize the importance of light when we see darkness. We realize the importance of our voice when we are silenced.
親愛なる姉妹兄弟の皆さん、光の大事さは、暗闇の中にいるとわかります。声の大事さは、沈黙させられるとわかります。
シンプルにして印象的な表現。
スピーチ全体は、16歳の少女とは思えない見事なものとなっている。
各スピーチの後には、「背景」を解説している。
マララがノーベル平和賞を受けるようになった経緯、タリバンに銃撃されたこと、スピーチには多数の専門家が関与してマララが利用されていること等。
どのスピーチにも背景解説があって、多くの発見と学びの機会をもたらしてくれる。
対訳の参照がしやすい工夫
本書は、英語と日本語の見開き対訳になっている。
すべてのセンテンスに番号が振ってあるので、対応する文章がすぐに見つかる。
英文を読んでいてわからない表現にぶつかったときに、一瞬で訳文が見つけられる。
たとえば、6番の英文にわからない英語表現があったら、6番の訳文を見ればいい。
センテンスに番号を振ったのは良い工夫だった。
驚くほどシンプルな英語
スピーチは広く聴衆に語りかけるものなので、難解な英単語とか、凝った構文はほとんど使われていない。
子どもでも理解できるようなシンプルな英文ばかりだ。
以下、オバマ大統領の就任演説から。
Today I say to you that the challenges we face are real. They are serious and they are many. They will not be met easily or in a short span of time.
今日皆さんに申し上げたいのは、私たちが直面する試練は現実のものであるということです。試練は深刻なもので、その数も多いのです。簡単に、あるいは短期間で対処できるようなものではありません。
あらゆるスピーチの中でも、米国大統領の演説は、びっくりするほどシンプルな英語で書かれている。
それでいて、格調高い。
熟練のスピーチライターたちが練りに練った英文で、丸暗記したいくらいだ。
英語学習の素材として大統領演説がもてはやされるのも納得。
興味のある方は、オバマ演説集もお勧め。
ナポレオンの演説とは
最後に、ナポレオンの演説を一部紹介したい。
本来はフランス語だが、それを英訳したものが収録されている。
陸軍将校となったナポレオンが、国外での戦争にはじめて勝利した後の演説。
Soldiers, your country is justified in expecting great things of you. Will you fulfill its hopes?
兵士たちよ、祖国が諸君らから偉大なものを期待するのは正当なことなのだ。その願いを満たしてはくれまいか?
情熱的に兵士に訴えかける。
大軍を率いた将校の演説とはこういうものだろうか。
スピーチを読んでいて、妙な既視感があった。
日本のアニメに出てくるような内容だと思った。「ガンダム」とか「銀河英雄伝説」あたりを思い出した。(最近のアニメで言えば何だろうか)
全体的に芝居がかっているところが面白い。
演説の終盤になると、以下のように断言しはじめる。
Anyone who engages in pillage will be shot without mercy.
略奪行為を働く者は、容赦なく射殺する。
兵士たちのことをさんざん褒めて持ち上げた後で、厳しいことを言う。
ドラマチックな演説だった。
ときにはシリアスな英語で学ぶ
本書で取り上げられているスピーチは、シリアスな内容ばかりだ。
日常英会話のような軽い内容ではなく、重い内容の英語を学ぶことになる。
英語スピーチは、「重い英語」という意味でも貴重な素材と言える。
「重い」といっても「暗い」というわけではなく、深刻な事態に負けないように力強さと希望を訴える内容となっている。
いつも軽めの英会話教材を使っている方は、本書を使えば刺激が得られる。
英語を学習しているなら、一度はスピーチ教材を使ってみたい。