英語モード」でライティング―ネイティブ式発想で英語を書く 著者:大井 恭子 出版:講談社インターナショナル 発行日:2002/2/15 |
英語ライティングの考え方をまとめたエッセイ。新書サイズの少ないページ数の中に基礎から応用までポイントをまとめている。
「発想の違い」「モードの違い」「書く秘訣」が解説されていて、短時間でライティングの要点に目を通すことができる。
ライティングの基礎から応用まで一気にまとめる
本書は、英語のライティング学習をこれから始めたい方に適している。
基礎的な知識としては、” I think “をなるべく使わない、時制の一致を心がける、繰り返しを避ける、といった内容がある。
応用的な知識としては、根拠のある文章を書く(アーギュメント)、自問することで知的な文章を書く(知識変形型)、主張を常に一貫させる(直線の論理)など。
短いページ数の中で、ライティングポイントがひと通り詰め込まれている。
ライティング教材といえば、当サイトの一押し「英語なるほどライティング」もある。合わせて読めば、理解が深まるはず。
優劣の問題ではない
ライティング教材というのは、やはり比較文化論の趣がある。本書では言語学の論文を引用しながら「英語」と「日本語」を比較している。
たとえば、論理展開の違いとして、一直線に主張を述べる英語にたいして、日本語は結論が渦巻きのようにぐるぐる揺れ動いて一貫性がないという。
たしかに、あらゆる立場に肩入れして「何が言いたいのかわからない」文章は、日本語に多いと感じる。英語でそのような文章を書いたら通用しないので、注意すべきポイントなのは間違いない。
しかし、これは言語的な「優劣」の問題ではない。少し気になったのは、本書で引用していた言語学の論文がやけに日本語に否定的だったこと。この手の比較文化論は、無意識のうちに片方がスタンダードだと見なしていることがある。
日本語の文章は、「こちらが良い」と一方的に主張するよりも、双方の主張を往復しながら「どちらにも一理がある」と確認するのに向いているのだろう。
自らを主張するためではなく、相手を理解するための機能が日本語で発達したとも考えられる。
このような日本語の特性は、過去の環境が育んだもので、その特性が長所になる場面もある。
外国語を習得するときにはその文化圏の論理を学ぶことになるが、優劣の価値判断を刷り込まれないように注意しよう。