本物のビジネス英語力 著者:久保 マサヒデ 出版:講談社 発行日:2016/8/19 |
ロンドンで19年間にわたって金融機関に勤めた著者のアドバイス。
国際社会では英語力よりもコミュニケーション能力に勝る方が有利であることを強調している。
海外勤務の予定があるビジネスパーソンにおすすめ。
長期滞在者のアドバイス
著者はドイツ系銀行のロンドン支店に15年勤務した。その支店で唯一の日本人として、様々な国籍の人々と働くことになった。
国内企業の海外支店で数年働いたくらいの人とは違って、現地の外資系企業で長年サバイバルした豊富な経験をもつ。
本書は、英語そのものよりもコミュニケーション力に焦点を当てた「心構え」や「テクニック」を説いたページが多い。
日本人が英語圏の企業に飛び込んで働くケースを想定しているので、リアルな内容ばかりだ。
これから海外勤務をこなす人にとっては、英語学習以上に値千金のアドバイスとなる。
先入観は持たないこと
本書の中には、海外で働くことに少しだけ慣れたような人がやりがちな間違いが多数あった。
外国人の言葉を本音だと思い込むこと。ぶしつけにNOを言うこと。プライベートの時間にいっさい仕事をしなくなりメールのレスポンスが遅いこと。
「外国人はこうする」といった先入観をもっていると、さまざまな失敗をすることがよくわかる。
議論は早めに発言する
本書には数々の「実践に役立つテクニック」も書かれている。その中で、議論について印象的な話があった。
ビジネスをしていればグループで議論することがよくある。
議論がはじまったら、できるだけ早い段階、議論が白熱する前の段階で、なんでもいいから何かを発言しておくことが重要だという。
外国人(本書では欧州人)は子どもの頃から徹底して意見を言うようにしつけられている。しかも英語ネイティブは自由に話せる。
日本人は自分の意見を言うトレーニングがされておらず、英語を自由に使いこなせない。
そのため、言いたいことを何も言えずに議論が終わってしまうことがよくある。議論で発言しないと、何も貢献していないとみなされてしまう。
議論が白熱してから、自己主張の強いネイティブがペラペラしゃべっているときに割って入るのは至難の業だ。
議論の最初の段階で、一言でもいいから何かを発言するように心がけたい。
まず取り組むべきはヒアリング力と単語力
本書は全編を通して、海外で働くときの「コミュニケーション能力」について書かれている。
しかし、最後に英語力についてのアドバイスがあった。
効率的に英語でのコミュニケーション力をつけるためには、どうしたらいいだろうか?
著者は、「ヒアリング力と単語力」であると語る。
なぜヒアリング力を最初につけるべきか?
相手の言うことがわからなければ、こちらから応えようがない。
こちらから英語をしゃべったところで、相手の返事がわからなければ、やはりコミュニケーションにならない。
しゃべるのは後回しにしてもいいから、とにかく相手の英語を理解するヒアリング力は、コミュニケーションで欠かせないという。
リスニング学習を優先するのが、ビジネス英語の手順といえそうだ。
なぜ単語力が一番重要なのか
英語のコミュニケーションにおいて単語力が重要だという。
単語さえ頭に入っていれば、最悪単語を並べるだけでもコミュニケーションはできます。
たしかに、文法が間違っていても、単語さえ適切であれば会話はなりたつ。
著者がロンドン時代に勤めた銀行には、フランス人の上司がいた。その上司は英語の文法がいい加減で発音も悪かったが、単語が適切だったので会話が成立したという。
多様なバックグラウンドの人たちが集まる場所では、単語力がものをいう。
著者は今までずっと単語帳を作ってきたという。