ネイティヴチェックで鍛える ビジネス英文ライティング 第2版 著者:デイヴィッド・ セイン 出版:DHC 発行日:2013/4/15 |
英文ライティング教材の名著。
基本ルールから状況別の定型文、ビジネスレターの実例まで。
赤ペン添削の工夫によって、驚くほど学習効果の高い教材に仕上がっている。
新しいライティング教材へのアップデート
昔からビジネスレターの教材は数多く発行されたが、2000年以前の教材はほとんど役に立たなくなった。
というのも、その時期からビジネスでEメールが多用され、ビジネス英文の文体が劇的にカジュアルになったからだ。古い教材の英文は、Eメールで使うと不自然だという。
また、英語圏において差別語への認識が高まり、公的に使われる単語も変化した。(「ビジネスマン」ではなく「ビジネスパーソン」が使われるなど、いわゆる political correctness への配慮)
本書は、そういった時代の変化に合わせて、より適切なビジネスライティングの教材として編集されている。
2003年に第一版が発行されベストセラーになった。2013年に加筆され、改訂第2版となった。ビジネスライティングの分野では、不動の定番教材。
いかにも模範的な構成
著者はディビッドセイン氏だけあって、構成が実に練られている。一目で学習効果が高そうなつくり。
第1章では、ビジネスEメールの書き方を解説。「不要な前置きはできるだけ避ける」「冗長な表現は避ける」など。
第2章の基本編では、「依頼する」「提案する」など目的別の表現を解説している。「よい知らせを伝える」「悪い知らせを伝える」など、それが知りたかったと唸るような41テーマ。
第3章の実践編では、「出張のアレンジ」「受注する」「解雇の通達」「会議の通知」「就任の挨拶」といった57の事例。メール全文の解説となる。
ネイティブチェック形式は「当たり」だった
さて、本書の特徴は、なんといってもネイティブチェック形式になっていること。
単に模範の英文を示すのではなく、日本のビジネスパーソンでありがちな間違いが書いてあって、それを赤ペンで訂正しながら解説している。
このネイティブチェック形式は、はたして有効な編集方針だろうか。 自分の間違いを訂正してくれるわけではなく、ありがちな間違い(他人の間違い)に赤ペンチェックが入っているのは有効だろうか。
結論からいうと、格段に学習効果がある。
間違い表現、正しい表現、それぞれが対置されることになって、学習ポイントが印象に残りやすい。表現を比較することで、はじめて興味がわいてくるのだった。
むしろ、単なる例文を見せられても、そこから学ぶことは難しいことに気づく。一方的に模範英文を示すような教材が、実に退屈なものだと気づいてしまった。
間違い表現の内容は、「語法の間違い」「ニュアンスが間違って伝わる表現」「冗長すぎる表現」の3つが多い。
それらは「自分もそう書いてしまうかも」と感じる間違いばかりだ。著者のデイビッドセイン氏は、日本で長年にわたり英語を教育してきたので、日本人にありがちなミスを完全に把握しているのだろう。
ビジネス英文Eメールを学習したい人には、本書を強くお勧めしたい。ビジネスEメールがカジュアル表現であることを考えると、普通のライティング教材としても使える。
ビジネス英文ライティングを学んでいる人は、本書に加えて「英語ライティングルールブック」も手元に置けば学習効果がさらに高まる。