NHK3か月トピック英会話 ハートで感じる英文法 著者:大西泰斗 ポール・マクベイ 出版:NHK出版 発行日:2005/12/16 |
NHKテレビ講座の「ハートで感じる英文法」は、英語の感覚がわかる講座として、シリーズ化されるほど人気を博していた。
その講座を書籍化したのが本書。
その英語を使ったときにネイティブは何を考えているか
従来の英文法といえば、文法規則と日本語訳で学習するものだった。
たとえば、現在完了形だったら、完了・経験・継続・結果の4つ用法があると教えられ、それぞれ「~したところだ」「~したことがある」などと日本語訳で理解しようとしていた。
本書はそういった文法学習に疑問を呈する。ネイティブはそのようなことを考えていないという。
現在完了形は、ネイティブにとっては「迫ってくるイメージ」があるだけで、「完了・経験・継続・結果」の4つはその典型的なケースに過ぎない。
そのことを過去形と現在完了形を比較しながら解説していく。
また、that ひとつをとっても、指示代名詞にもなるし、関係代名詞にもなるし、同格節を導くこともある。従来型の文法解説では用法を羅列することしかできない。
本書では「指すから導く」というイメージを使って、すべての用法について一貫した解説を行う。
どの文法項目も見事な解説になっていて、読んでいて英語の感覚が腑に落ちる。英文法を和訳から理解するのは不可能だとつくづく感じた。本書のようにネイティブの感覚に迫っていく努力が必要なのだ。
ケンカを売るから意味がある
ところで、本書の構成はプレゼンのお手本のように巧みなものになっている。
まず、「従来型の学習」を提示して、読者が学校で学んだ内容を思い起こさせる。
その後、「従来型の学習」を批判する形で、自説を続ける。
学校英語にケンカを売ることで、読者を虜にする作りになっている。
世の中に英語教材は山ほどあるから、従来とは違う何かを主張しないのであれば、新たに出版する意味はない。
本書のように何かを主張するからこそ、出版する意味がある。
ただし、ネイティブ感覚で英文法を解説するのは、「日本人の英語」が先駆けなので、本書の主張がすべて新しいわけではないが。
それはともかく、英語にそこそこ自信がある人でも、学校で習った古い文法感覚がしみついているかも知れない。本書で英文法をアップデートしてみはいかがだろうか。
また、中学や高校の英語教師の方々は本書のような教材を虎の巻にして、より良い文法授業につなげてほしいと思う。