英語の仕事術 著者:岩田ヘレン |
コミュニケーション・スキルをテーマにした本。
グローバルビジネスの現場で必要となる準備や考え方を紹介する。
「上手な聞き方、尋ね方」「英語プレゼンテーション」「電話会議」「ミーティング」「コンフリクト」の5シーンを学ぶ。
著者の岩田ヘレンさんは、グローバルビジネスで活躍する人たちへのコーチング事業を行っている。
英語力よりもコミュニケーション力
英語に苦労しているビジネスパーソンは、「英語力」を過大評価しがちだ。
英語が上達すればグローバルビジネスで成功する。ビジネスが上手くいかないとしたら、英語力が足りない。
そんな風に、英語力がすべての原因となっているような錯覚がある。
しかし実際は、英語が上手くなくても、グローバルビジネスで成果を上げて、成功している人がいる。
英語力よりもむしろコミュニケーション力が重要であることは、多くの人が気づきはじめている。
本書は、グローバルビジネスでのコミュニケーション力を真正面から取り上げた本。
以前レビューした「英語ミーティングの基本スキル」にコンセプトが近いが、本書は幅広いビジネスシーンをテーマにしている。
コミュニケーションの考え方を丁寧に伝える
本書のほとんどのページは、コミュニケーションについて解説した本。
たとえば「2章 英語プレゼンテーション」では、次のような順序で解説している。
「なぜ人間は人前で話すのを怖がるのか」といった話から入り、「まず、聴衆を理解する」といったプレゼンの本質へと続ける。
具体的なスキルだけでなく、本質的なことを伝えようとする著者の思いが伝わってくる。
その後、「インパクトのある出だし」「わかりやすい構成」といった具体的なスキルを解説していく。
ほとんどのページが日本語での解説となるが、具体例としての会話が英語だったり、一部に効果的な英語表現を紹介した部分もある。
網羅性があるので準備になる
本書はかなり網羅的に書かれている。そのテーマで重要なポイントをできるだけ列挙しているような感じだ。
1つ1つの項目はサラッと短めに書かれているので、それ以上の内容は試行錯誤でやっていくことになる。
たとえば、「4章 グローバル会議をリードする」では、「グローバル会議での典型的な問題」を列挙している。
- 目的が達成できない
- 目的が明確になっていない
- 遅刻者、途中退席者
- 発言しない人に発言させ、話しすぎの人をどう黙らせるかの葛藤
- 意見対立をどう管理するか
- すぐに話が脱線してしまう
- 会議中にスマホ、PCのために気を散らしてしまう
- 会議時間が長すぎる
- 出席すべき人物がいない
前もってミーティングで起こり得る問題を網羅してくれている。
しかし、以下の写真でわかる通り、1つ1つの項目はごく短く書かれている。
本書は1つのテーマを深く掘り下げるのではなく、重要なポイントを幅広く網羅していることがわかる。
この手の本は、読み物として面白いわけではない。
しかし、実践のときに極めて心強い助けになるかも知れない。
たとえば、実際に英語のミーティングをやることになったら、経験の少ない人は何を準備したらいいのかわからない。
本書を読めば、どんなことが起きるのか、どういった心構えが必要なのかがよくわかる。
プレゼンにしても、電話会議にしても、知っておくべきコミュニケーションのポイントを網羅的に教えてくれる。
グローバルビジネスの現場に近い人ほど、本書を高く評価することだろう。