音読で鍛える英会話―読んで・聞いて・声に出す英会話練習法 著者:岩村圭南 / ブレーブン・スマイリー 出版:アルク 発行日:2009/01 |
筋肉を鍛える講師
著者の岩村圭南氏は、NHKラジオ英語の元人気講師。2000年代に入ってから、「レッツスピーク」「徹底トレーニング英会話」「英語5分間トレーニング」を担当していた。
すべての講座に共通しているのは、「筋肉を鍛える講座」のキャッチコピーが示すように、声に出すトレーニングを目的としていたこと。音読、オーバーラッピング、シャドーイングなど、トレーニングに特化した講座になっていた。
著者はNHK講師になる以前、1990年代から「リピーティング」を提唱していた。
音読しやすい教材
「音読で鍛える」というタイトルにあるように、本書も声に出して練習するための教材。(音読もリピーティングの一種なので、以下「リピーティング」と呼ぶ。)
レベルは比較的やさしくて、中学2年~3年あたり。幅広い人に有用なレベルといえる。
本書の特徴は以下の3点。
1.短めのセンテンス
著者が担当していたNHKラジオ講座とも共通しているが、英文のセンテンスが短めになっている。
長いセンテンスだとリピーティングの負担が大きくなるので、あえて短めの英文を選んでいる。切れのいい短めのフレーズによって、リズム良くトレーニングできる。
2.機能表現を学ぶことができる
会話において、特定の目的を達成する表現を学ぶ。賛成する、反対する、誘いを受ける、依頼する、言い訳をする、許す、尋ねる、提案する、勧めるなど、全部で60シーン。
英会話で抑えておきたい有用な表現ばかりなので、意欲的にトレーニングできるはずだ。
3.同じ英文でモノローグとダイアローグ
リピーティング練習は、モノローグ(独白)の方が練習しやすい。ダイアローグ(会話)だと一人二役になったり、間があいてしまう。モノローグなら連続的に(一方的に)発声できるため、リズム良く進められる。
そこで本書では、一気につなげて読んでも違和感のない英文が5センテンスほど収録されていて、最初にモノローグとして練習する。その後、同じ英文を使って、より実践的なダイアローグ練習へと移る。見事な工夫になっている。
ということで、本書は良心的なトレーニング教材。
巷には、音読用の教材と言いつつ、何の工夫もない教材が多い。単に英文と音声があって、「さあ勝手に音読してください」という雑な教材が多いのだ。
それらに比べて、著者はリピーティングを普及させた第一人者だけに、トレーニングしやすい工夫を盛り込むことができる。小さな工夫に見えても、学習者にとっては大きな違いに感じられるはずだ。