英語は「激伸び」る!

勉強しながら何を考えるか。そこで差が生まれる

スタート時点で同じような能力でも、実力が伸びていく人とそうでない人がいる。

同じことをやっているのに差が出るというのは、スポーツ、技術、学問、仕事、趣味などあらゆるジャンルで、大いなる謎ではないだろうか。

英語の習得においても個人差が大きい。同じような学習をしても、顕著に伸びていく人もいれば、なぜか伸びない人がいる。勉強する量が違うわけではないし、学習法が違うわけでもない。何故なのか。

本書では、英語を勉強しているときに頭の中でやっていることが違うのではないか、という仮説を立てている。

たとえば、音読ひとつをとっても、ある人は「単につっかえないように一生懸命に読む」ことを考えていて、もう一人は「その英文を自分の台詞として誰かに話しているように読む」ことを考えている。

外から見てもわからない頭の中の違いによって、大きな実力差が生じるのではないだろうか。そして、伸びる人が頭の中でやっていることがわかれば、伸びなかった人も飛躍的な実力アップが望めるはず。

ということで、本書のテーマは、英語が伸びる人は「頭の中で何を考えているのか」。「新TOEIC実践勉強法」の石井氏による渾身の学習法ガイドになっている。

ここまで意欲的なテーマの学習法ガイドは滅多にない

本書は数多くの論点を取り上げているのだが、ここでは特に印象に残った点を一つとりあげたい。

以下の英文を読んでいただきたい。

Tom is planning to go to London to study English next year.

この英文を読んで、どんな印象をもっただろうか。英文の意味がわかるかどうかでなく、あなたは何を思っただろうか

「トムは英語を勉強するためにロンドンへ~」という内容。そして、トムは英語圏に多い名前。どういう状況なのだろうかと疑問に思っただろうか。

日本語で、「健一は日本語を勉強するために東京へ~」という内容だったら、当然ながら疑問に思うはず。健一は外国育ちで日本語ネイティブではないのか、あるいは日本語教師を目指しているのか、など。

もし、「トムは英語を勉強するためにロンドンへ~」という英文を読んで、そういった疑問がわきあがらないとしたら、それは内容を理解しようとしていないのだ。

英語が伸びる人は、その英文を読みながら疑問に思ったり、背景を推測したり、感情移入したりと、自分自身の実感をもっている。つまり、内容を理解しようとしている。

伸びない人は、英語の(語学上の)意味をとることだけを考えて、自分自身の実感として英文の内容と向き合っていない。

本書では、「人生を背負って英文を理解する」という名フレーズでこのポイントをまとめている。

これは単に英語上達にかかわるだけでなく、英語学習が刺激的かどうかにかかわっている。個人的な実感をもって素材に向き合っていれば、英語学習が人生の一部として刺激的なのだ。

逆に、英文の内容と真正面から向き合わず、「文法や語彙の意味がわかればいいんだろう」という学習スタンスの人は、英語学習をしながら無味乾燥なつまらない時間を過ごしている。何の疑問も持たずに「トムは英語の勉強をするために~」と意味をとってしまった人は要注意だ。

本書は、このように英語が伸びる人が頭の中でやっていることを説明し、深いレベルで上達のコツを解説している。実に意欲的なテーマで、学習ガイドの中でも指折りの名著といえるだろう。

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