英会話・ぜったい・音読

音読によって使える英語になる

著者の国弘正雄氏は、年配の方にとって懐かしい名前となる。1970年代のラジオ「百万人の英語」で人気を博していた。その他にも、同時通訳、テレビキャスター、大学教授、政治家など、多方面で活躍していた。

そして国弘氏といえば、何より「音読の提唱者」として知られる。「只管朗読(しかんろうどく)」という言葉を使いながら、音読の普及に力を尽くした。

「只管朗読」とは、英文をひたすら朗読すること(声に出して読むこと)で、「とにかく音読せよ」という強いメッセージになっている。禅の言葉「只管打座(しかんたざ)」(ただひたすら座る)から転用した造語だという。

なぜ、それほど音読をすべきなのか。その理由は、「知的記憶から運動記憶へ移すため」だと説明している。

単に英文を理解しただけでは、知的記憶にとどまるため、その英語を使えない状態にある。口に出すことで(体を使うことで)、その英語は運動記憶へと移動し、使える英語になるという。

音読は今でこそ常識的なトレーニングだが、かつて英語をまったく発声しないで学習していた時代もあったのだから、著者の貢献は大きかった。

中学3年の英語教科書が絶妙

本書「英会話・ぜったい・音読」は、音読をテーマにした定番教材になっている。人気の秘密は、「中学3年の英語教科書」から素材を抜き出している点にある。

中3教科書という素材がウケた理由は、多くの人に適したレベルだったからだ。そもそも音読トレーニングの目的は、理解できる英語を使える英語にすること。「英文は読めるけど、それを使って英会話できない」というレベルで練習するのが最適となる。

「中学3年くらいの英文なら読むことはできるけど、それを聞き取ったり会話するのは苦手」という人は、かなり多いはずだ。中3教科書は、絶妙なレベルといえるだろう。

一方で、「英語が苦手なので、中学3年レベルの英文が読めない」という人は、本書のユーザーに想定されていない。テキストの全訳はないし、文法の説明もないので、その点は注意したい。

オーバーラッピングを付け加えたい

本書の前半は、共著者の千田潤一氏によるトレーニングガイドとなっている。よく練られた学習メソッドになっているが、重要な変更点を加えたい。

<最初の2ヶ月「基本トレーニング」>
CDを聴く→ 意味を理解する→ 音読する →音読しながら筆写する →もう一度聞く

筆写まで言及されているのは優れているが、一点だけ難点がある。それは、リスニングと音読が分離していること。CDを聴くのと音読が別のトレーニングになっている。

そこで、オーバーラッピングというトレーニングを付け加えたい。オーバーラッピングとは、CD音声を聴きながら、同時に音読すること。模範の音声に自分の声を合わせるトレーニングとなる。これによって、発音やイントネーションが自己流にならず、より自然な英語が身に付く。(オーバーラッピングについては、リピーティングのページも参照)

音読をするときには、自分の発音が正しいのか不安になるものだが、オーバーラッピングを繰り返し練習しておくことで、自信をもって音読できるようになる。 以下のように改変したい。

<基本トレーニング(改)>
CDを聴く→ 意味を理解する→ オーバーラッピング→ 音読する→ 音読しながら筆写する→ もう一度聞く

音読だけで英語のすべてが身に付くわけではないが、中級レベルになるまでは必須のトレーニングとなる。本書を使うかどうかはともかく、声に出す練習は必ずやるようにしよう。

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