英語ライティング講座入門

英語の発信力をつける

本書は、ごく簡単な文章の英作文(和文英訳)を行う。10年以上にわたる人気教材で、意外にも類書は少ない。

「入門編」とあるが、あくまで「ライティング入門」であって、「英語入門」ではない。中級レベル程度の英語力をもつ人が、今まで手薄だったライティングスキルを身に付けるときに使うと役立ちそうな教材。

本書の内容を紹介しながら、人気の秘密を探ってみたい。

英会話にも役立つ発信型教材

英作文する内容は、すべて口語の文章。「明日、お客さんがくるよ」「宿題やったの?」「失礼ですが、ウィリアムズさんですよね?」といった会話調のフレーズを英作文する。ライティングはもちろんだが、英会話の発信力アップに役立つことは間違いない。

ライティングのコツが身に付く編集

本書のメニューを一見すると文法別に並んでいるように見えるが、英作文のコツが身に付くように項目が整理されている。「状態動詞と動作動詞」「どの疑問視を使うか」「副詞の少ない英文を書く」「限定用法と叙述用法」など。

英文法の知識があっても、正しく英文を作れるわけではない。どうしても母語の干渉が生じて、日本人に特有の間違いに陥る。本書は、英語の発想へと転換するためのポイントを文法別に整理してあるのだった。

飽きずに続けられる工夫

問題と正解が1対1で並んでいるような、つまらない本ではない。問題の出し方にも工夫がある。ライティングポイントを解説をする「例題」、正しい英文を選ぶ「選択問題」、表現のヒントが付く「ヒント付き英作文」、徐々に正解に近づいていく「仕上げ問題」。

詳しく解説を読む問題と、スピーディーに解答する問題があって、学習していて体験が変る。このような工夫は人気の秘訣だろう。

必ずしもライティングのプロセスを再現していない

本書の欠点を言うなら、必ずしもライティングのプロセスをそのまま解説していないという点だろうか。

たとえば、「注意を要する形容詞」の項目に次のような問題があった。

あなたが一番恥ずかしかったことを教えてください。

「恥ずかしかったこと」をどう表現するかがポイント。本書では
不自然な英語として、what you were embarrassed at
間違った英語として、your embarrassed story
そして正解は、your embarrassing story
をあげている。

しかし、実際に上記の英文を作るときに、通常は迷う余地なく embarrassing story が浮かぶ。というのも、インプットを重ねている人にとってはお馴染みの表現で、ほとんど決まり文句のようなものだからだ。(恥ずかしい経験 embarrassing stories を投稿するジョークサイトも多い)

つまり、embarrassed なのか embarrassingなのか、どちらかで迷うという話は、日本語をそのまま英語にしようとするコテコテの英作文で発生する問題であって、英語の経験をある程度まで積んでしまうと発生しない問題なのである。

(現在分詞と過去分詞の形容詞的用法・・・といった文法の理解は大切だが、ライティングする際に「どちらか?」と迷うことは、ちょっと考えられない。ライティングの一般的なプロセスは、すでに保有している英語の固まり(チャンク)を組み合わせるものだと思う)

(他にも、not less than と not more than など、英語の経験を積んだ人から見れば、迷う余地がないポイントが、「どちらか?」という発想で本書は書かれている)

つまり、インプットなしで英作文をやろうとするから、日本語から強引に英語を作り出そうとして、さまざまな間違いが生じる。本書はその間違いの解説とか、正しい英文を選ぶ問題などがあるが、ライティングのプロセスからみると違和感がある。

(この点は、英作文をやめて英借文にするという「村上式シンプル英語勉強法」にも通じる話だと思われる。英作文から入ると苦労が増えるので、インプットを主体にするという話)

ただし、ここがパラドックスなのだが、ではアウトプットをやめて、延々とインプットばかりやっていればいいかというと、そうではない。

「どうやって英語にすればいいだろうか」という苦労をしていると、英語を読んだり聞いたりしたときに、頭の中に英語が残るようになるのだ。アウトプットで苦労をしているからこそ、インプットの吸収力が増えるのである。だからこそ、本書のような教材を否定できない。

ということで、レビューの結論は、本書を使うのは中級レベル以上になってからで、入門から初級レベルの人にはお勧めできないということ。

ライティングの入門学習というなら、お手本の英文の一部を変えて発信する「英借文」タイプの学習が適切だと思われる。(英借文で日記を英語で書いてみる、などの学習)

本書のような和文英訳のライティング学習は、中級レベル以上になってから取り組むべきだろう。母語の干渉を理解することで、発想の転換につながり、英語の発信力が高まるはずだ。

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