「達人」の英語学習法

英語学習法の本は、どうしても内容が似てきてしまう。奇をてらったヘンテコな理屈ではなく、至極まっとうな学習法となれば相場は決まってくるのだ。本書も良心的でまっとうな英語学習法ガイドなので、内容はオーソドックスなものとなっている。

副題に「データが語る」あるが、(統計)データを用いているのはごく一部で、「臨界期仮説」を検討した1章がほとんど。臨界期仮説とは、12~15歳を過ぎると外国語の習得が困難になるという通説のこと。結論としては、臨界期を過ぎても外国語は習得できるが、個人差が出るという。

では、その「個人差」はどういった差なのか。第2章でその点を検討するが、性格、動機、興味などを列挙するものの結論はない。

そして3章以降から英語学習法ガイドとなる。英語の達人たちの経験談をもとに英語習得のヒントを探っていく。ほとんどのページは「経験談」が根拠になっているので、副題の「データは語る」とは正反対のアプローチ。最近、内容と一致しないタイトルをつける書籍が多くなったように感じるが、いかがなものか。

ともかく、「達人」の英語学習法とはどういったものか。大半はオーソドックスな内容だが、印象的なのは「初期~中期」と「中期~」での学習法の違いである。

リスニング、リーディングともに初期の段階では1語1句にこだわって分析的に学習して、基礎力がついたら大量の英語に触れていくということ。「初期~中期」は精聴・精読、「中期~」は多聴・多読となる。

これは当たり前の話なのだが、わからない英語をいくら聴いたり読んだりしても意味がない。基礎力がつくまでは、文法はもちろんのこと、根気強い音読リピーティング練習を繰り返すしかないのだ。

その他、本書の中で印象に残った論点をピックアップしてみよう。

  • 英語の達人は、目的(意義)を持たずに言語能力を上げることに熱中する人が多い。
  • 英語の達人は、英語の使用機会を増やすことに涙ぐましい努力をしている。日本では英語を使う機会がほとんどないから、工夫して使用場面を作っていくしかない。
  • 簡単なことばかりやっても上達しない。現状より上を目指して、適度な負荷をかけ続けないと英語の上達はない。
  • 「深く・細かく(精聴・精読)」と「浅く・広く(多聴・多読)」は両立しない。学習段階によって切り替える。
  • 例文の徹底的な暗記はスピーキングの基盤作りになる。
  • スピーキングにおいて、初期は「流ちょうさ」を目指し、中期以降から「正確さ」を目指す。これも両立はできないので、段階によって切り替える。(初期のうちに正確さにこだわってはいけない)
  • ある程度まで英語を覚えた後に文法を学ぶことで知識が再整理される。すると「腑に落ちる」経験をすることになる。(文法が出発点ではなく、すでに頭の中にある英語の再整理(体系化)が文法学習のポイント。)
  • 学習コミュニティに参加することで他人に監視してもらうメリットがある。

有益なアドバイスが多くてお勧めできる学習ガイドだが、本書に含まれる「達人」たちの経験談(一次情報)は量的に少ない気がする。達人たちの「生の声」をもっと多く知りたかった。

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