日本人の英語はなぜ間違うのか?

日本人の英語と中学教科書に共通している間違い

本書の特徴は、英語教科書への言及にある。大学生に見られる間違いは、中学教科書にも共通しているという。

本書の第5章「仮定法の基本を理解する」から、一部をご紹介したい。

まず、ピーターセン氏は、以下のように言う。

大学生が書く英作文に触れて抱く大きな違和感の1つに、仮定法を一切使用しないことがあります。

たしかに、仮定法を苦手とする人は多く、仮定法を使うべきところでなかなか出てこない。

実は、中学2年の教科書でも、仮定法を使うべきところで使っていない英文がある。

If I’m rich, I’ll give all the street children food, clothes, and love.

上記は、ストリート・チルドレンの女の子が「私が金持ちだったら、ストリートチルドレンのみんなに食べ物と衣服と愛を与えてあげる」と語る場面。

しかし、仮定法を使っていないので、「私が金持ちかどうかわからないが、もし金持ちなら」という条件を語る文章になってしまう。

当然、その女の子が言いたいのは「私は貧乏だからできないけど、もし私が金持ちだったら・・」という事実と反することなので、以下のように仮定法を使わなくてはならない。

If I were rich, I’d (= I would) give …

なぜ中学校の教科書は、こんな間違った英文を載せてしまうのだろうか。

英文法の制約があることは間違いない。中学2年の段階では仮定法を習っていないので、仮定法の英文を掲載できない。

だったら最初から別の内容にすればいいのだが、無理やり「仮定法を使わない間違った英文」を載せてしまった。

教科書メーカーの怠慢ではないだろうか。使用できる文法が制限されているとしても、間違った英文を載せないように工夫してほしいところだ。

間違う理由は、言語的な差異だけではない

ところで、なぜ日本人は仮定法を苦手とするのだろうか。

ピーターセン氏は、次の2点をあげている。

ひとつには、日本語には仮定法に相当する文法用語がないこと。もちろん、日本語でも仮定法の内容は表現できるのだが、仮定のことと意識せずに済む。

たとえば、「金があったら、新しいパソコンを買いたい」というフレーズは、英語で言うなら仮定法を使うことになる。

日本語の感覚だと「条件」と「仮定」の区別が曖昧になるので、いざ英文にするときに仮定法が意識の上にあがってこないのだ。

もうひとつの理由は、日本の学校で仮定法を習うのが遅すぎること。

日本の学校で仮定法を習うのは高校1年。つまり、英語を学び始めてから4年目に入るまで、仮定法を使わない英文ばかり触れてきたことになる。学生にしてみれば、仮定法を使わなくても事が足りるような気がしてくる。

仮定法はどんな些細な日常会話であっても不可欠な表現なので、遅くとも中学2年になったら学ぶべきだと本書は提案している。学校英語のカリキュラムは見直しが必要かも知れない。

指折りのライティングガイド

ここまで読んだ方は、本書のテーマが教科書批判に思えたかも知れない。

それはまったくの誤解で、本書は指折りのライティング指導書になっている。教科書の話は、間違いの源流を探るような1つの「ネタ」に過ぎない。

本書では、ライティングで抑えておきたい項目を網羅している

「時制」「冠詞」「仮定法」といった日本人の苦手とする項目から、「繰り返しを防ぐには?」「論理の飛躍が多すぎる」「自然な英語を書くために」といったライティングの重要ポイント、さらに「itとthatを使い分ける」「soの用法の誤解」といった痒い所に手が届くような項目まである。

しかも、本書はすべて中学英語レベルで書かれているので、ピーターセン氏の著作の中でもっとも易しい。「日本人の英語」が難しかった人でも、本書ならスラスラ読めるはず。

初級から中級程度のライティング教材として、驚くほど学習効果が高いので、絶対にお勧めの一冊。

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