日本人の英語

古典的名著

本書は、英語ネイティブによる英文法エッセイ。日本人にありがちな英語の誤解を指摘しながら、ネイティブが何を考えて英語を使っているかを解説する。

類書は多いが、本書はその原点ともいえる名著。初版から四半世紀経つが、内容は古さを感じさせず、今でも人気は衰えていない。

軽妙な挿話が多いため、英文法の解説をしているのに普通のエッセイとしても楽しめる。著者のマーク・ピーターセン氏は作家としての実力がありそうだ。

本書は翻訳を通さずにピーターセン氏が直接日本語で書いている。日本語に精通している著者だからこそ、英語と日本語の微妙なズレを理解し、巧みに解説できるのだろう。

ネイティブだから説明可能となる英語のエッセンス

「ネイティブが何を考えて英語を使っているか」という点について、具体的に紹介したい。本書が絶大な支持を集める理由がわかるはず。

以下、不定冠詞をテーマにしたページから一部を引用する。

不定冠詞の a は、日本の英文法書では、名詞に付けられるものとして説明されていた。「名詞が数えられるもので、特定されないもので、単数であれば、aをつける」というように。ピーターセン氏は逆だという。

しかし、本当は逆である。すでにあった、ちゃんとした意味をもっていたのは、”a second glass of the old Madeira”のglassではなく、そのaである。そして、glassという名詞の意味は不定冠詞のaに「つけられた」ことによって決められてくる。

まず冠詞があり、名詞がそこにつけられることで意味が成立する。

例えば、もし食べた物として伝えたいものが、一つの形の決まった、単位性をもつ物ならば、” I ate a…a…a hot dog!”と、aを繰り返しつつ、思い出しながら名詞を探していくことになる。

aは「名詞につくアクセサリーのようなものではない」。名詞を思い浮かべるより前に、ネイティブはそれが単位性のものかどうかを意識していることになる。

個々の事物(名詞)よりも、単位性があるものかどうか(数えられるものかどうか)、話題の中で特定されるものかどうか、複数形か単数形か、という抽象的な区別(冠詞)が最初にくる。

この部分は、読者に衝撃を与えた説明として有名。英語ネイティブだから可能な解説であって、日本語ネイティブはどれだけ英語の達人になってもその発想はもてない。

英語を学んだ日本人が冠詞を説明すると、どうしたって「冠詞は名詞に付けられたもの」という方向性にならざるをえない。

しかし、考えてもみれば、名詞より前に発声される冠詞が、「名詞に付いている」というのは、論理的な順序としておかしい。冠詞の概念が最初にあるから、冠詞は名詞に先行しているのだ。

本書を読むと、「英語を学んだ人」ではなく、「英語で育った人」の解説がいかに重要かを痛感する。実際、本書の絶大な人気を背景にして、ネイティブによる文法教材が急増してきた。

本書には上記のような驚きと発見に満ちた解説が目白押しで、一読すれば英語への理解が一段と深まることは間違いない。英文法を一通り学んだ中級レベル以上の方にお勧めしたい。

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