句動詞の底力

句動詞の底力―「空間発想」でわかる広がる英語の世界

著者:クリストファ・バーナード
出版:プレイス
発行日:2013/12/5

「動詞+前置詞/副詞」で構成される句動詞について解説。

類書にはないほど、多様な切り口で句動詞に迫っている。

「英語の発想」が身に付く良書。

さまざまなアプローチで句動詞を解説

“get up” “get down” といった句動詞は、日常の英会話でよく使われる。あまりに数が多いし、複数の意味を持つ句動詞もある。使い分けに苦労している学習者が多いはずだ。

そこで句動詞の教材にあたることになるが、典型的な句動詞教材は表現を羅列したものばかり。結局は、1つ1つ表現を覚えていくしかないようにみえる。

本書はそのような教材とは異なり、句動詞の裏に隠れたロジックを1つ1つ整理している。ここまで多様な切り口で句動詞に迫った本は読んだことがない

  • 英語は空間中心の言語
  • どうして「句動詞」があるのか
  • 句動詞とは何か
  • 句動詞の7つのパターン
  • 「方法」より「考え方」を身につける
  • プラス/マイナスの次元から考える
  • 日本語から逆方向に考える
  • パーティクルはどこまで広がるか
  • 句動詞から名詞へ
  • 「句動詞」と「ふつうの動詞」との使い分け

上記はごく一部のアプローチを引用した。句動詞の理解が一気に進むことは間違いない。

英語の初級者よりも、中級レベル以上の人に本書をお勧めしたい。

基本的な句動詞をすでにわかっている人が、知識を整理するために読むと学習効果が高い

どうして句動詞があるのか

句動詞に苦労している人は、「なぜ英語にはこんなに数多くの句動詞があるのか?」と疑問に思ったことはないだろうか。

本書は明快に答えているので、一部を引用したい。

13世紀までの英語の変化:名詞の格変化が衰退して、前置詞が重要になる。

I went the ship + toを表す語彙.という文の代わりに、I went to the ship.のような構造が広まり始めました。

もう一つの変化。

17世紀までに、動詞の接頭辞が動詞の前から後ろに移動した。

upriseの代わりにrise up と言うようになったのです。

こうして、動詞+前置詞/副詞の形が英語の中で頻出するようになった。

そして、ここから重要なのだが、前置詞/副詞が分離するようになったことで、意味が比喩的に拡張されるようになった。

She came into the room.「彼女は部屋に入ってきた」
She came into an inheritance.「彼女は遺産を引き継いだ」

ほかにも比喩的な意味の例をあげておきましょう。

The ship came into sight.「船が見えてきた」
The flowers came into bloom.「花が咲きそろった」
The first organism came into existence.「最初の生物が生まれた」

最初の文は、「部屋」という具体的な空間に入ることだったが、あとは比喩的に「状態」に入ることを示している。

このようにして句動詞の意味は拡張されていく。前置詞/副詞が、動詞や名詞から独立したからこそ、比喩的な転用が可能になった

こう考えると、句動詞というのは、英語表現の豊かさを示していることがよくわかる。

本書を読むことで、単に句動詞の力がつくだけでなく、句動詞に興味が出てきて、句動詞が好きになるはずだ。

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