国際人の英会話学習法

一貫した信条「Less is more(少ない方が得るものが多い)」

著者のスティーブ・ソレイシィ氏は、以前「ボキャブラ天国」などのテレビ番組でよく見かけた。最近はメディアで見かけることは少なくなったが、第二言語習得の学者として活動しているという。

著者はフレーズ系の英語教材を多く執筆していて、「英会話なるほどフレーズ100 」はベストセラーになっている。応用の利く言い回しを身につけるのがコンセプトの教材で、そこそこ評価も高い。

本書「国際人の英会話学習法」では英語の学び方について存分に語っている。結論はフレーズ教材と一貫していて、「応用性の高い厳選フレーズだけを運用する」という点につきる。

少ない表現だけ覚えて、応用を利かせる。「Less is more(少ない方が得るものが多い)」というのが、外国語をマスターするための信条だという。

日本語を学ぶプロセスで開眼

著者は日本語を学ぶプロセスでこれに気付いた。大学院で日本語を学んでいるときにやらされたのは、「が」と「は」の使い分けといった日本語パズル。その不毛感に堪えられず、独学で取り組むことを決意する。

そのときに自ら編み出したのが、よく使われる表現だけを覚えて、それを応用させる方法論だった。細部の正確さにはこだわらず、キーフレーズを覚えていった。

その後の活躍は周知の通り。「外国人による日本語弁論大会」で優勝し、メディアでは流暢に日本語を話し、日本語で書かれた本書の執筆を自らこなしている。

1000通りの英語表現ではなく、1つの表現を運用する

英語を身につけるときもキーとなる表現(言い回し)を覚えることが肝心だという。応用の利く表現さえマスターしておけば、かなりのコミュニケーションが可能となるからだ。

本書では、”May I have ~”を例にしている。この表現さえ知っておけば、物をゲットしたいとき、人をゲットしたいとき、情報をゲットしたいときなどに1000の応用ができる。1000通りの表現を別々に覚えるより、1つの表現を知っておけばいいのだ。

著者の主張する学習法は奇をてらったことでもなく、至極当然のことに思える。海外旅行の際には、誰もが経験することではないだろうか。場所を訊ねる表現を一つ覚えておけば、ホテルの場所、トイレの場所、空港カウンターの場所、なんでも応用が利く。外国語が苦手な人でも、数少ない表現なら覚えることができるし、それで用が足せる。

日本人はなぜ英会話ができないか

よく考えてみると、外国語を身につけるなら、そういったプロセスで進むのが自然なのだ。まず、応用性の高い基本表現をいくつか覚えて、それを実際に使っていく。

問題は、日本の英語教育ではそのプロセスで学べない点にある。英語を学ぶときに、aとtheの使い分け、someとanyの使い分けといった細部にどんどん入り込んでいく。正確さにこだわる「英語パズル」を延々とやらされてしまうのだ。

これは言うまでもなく試験のためである。実際のコミュニケーションではなく、試験のための英語となれば、細部に立ち入らないと問題が作れない。結局、これで英語嫌いの人が増えたり、試験はできてもコミュニケーションが取れない人が多くなる。

英語をやり直す社会人であれば、もう試験のために英語を学ぶ必要はない。英語パズルを繰り返す必要はないのだ。本書の学習法で英語を学ぶことができる。

ネイティブ水準を目指さない

本書の大前提は、ネイティブ・ライクを目指さないことにある。そんな高い目標を据えたら挫折しか招かない。 英語は第二言語なのだから、道具として使える水準で充分だという。

本書では、それを「国際人」という言葉で説明している。当たり前のように英語を駆使しているノンネイティブの人たちは多い。しかし、そういう「国際人」たちは、英語キーフレーズという道具をポケットに入れて、必要なときに取り出して使っているだけなのだという。

つまり、本書の裏の主張は、「もっと現実的になろう」ということ。ネイティブ水準を目指すのはやめよう、もっと目標を下げれば英語ができるようになる、という提言である。

そう主張する著者の日本語は完璧に思えて仕方がないが、それはともかく、英語を学ぶ人に勇気を与える内容である。

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