脳科学的に正しい英語学習法

脳科学的に正しい英語学習法

著者:加藤 俊徳
出版:KADOKAWA/中経出版
発行日:2015/4/25

「脳の強化書」で知られる脳科学者の英語学習ガイド。

「脳番地を連携させる」といった独特の言葉で、効果的な英語学習法を解説している。

また、脳は「好きか嫌いか」の感情に大きく影響を受けるため、学習法を選択する必要がある。

脳を意識すると達成できる気がする

著者の加藤俊徳氏は、MRIで1万人の脳画像を診断した脳科学者。苦労して英語を習得したので、「脳科学者+英語上級者」の顔を持つ。

本書には著者の経験的な学習TIPがたくさん掲載されているが、必ずしもすべてが目新しいわけではない。しかし、脳科学の知見と著者の経験を融合させることで、興味深い英語学習法ガイドに仕上がっている。

本書を通して、一番印象に残ったのは、「脳を意識する」というアドバイス。たとえば、次のような話があった。

ある29歳の女性は、1年後に視覚系脳番地が顕著に発達していた。(女性の脳のMRI画像が比較されている)。その部分が鍛えられるように指導したからだった。

大人になっても脳は発達するのだった。「私は生まれつき○○が苦手」といった運命論で諦める必要はない。単に、脳神経の枝が伸びているかどうかであり、成人になった後でも、意図的に脳の特定部分を発達させることができる。

英語を苦手とする人が勇気づけられる話ではないだろうか。英語ができないのは、脳神経の枝が伸びていないだけ。脳を鍛えれば、大人になっても脳神経は発達する。そう言われると、なんだか英語が上達しそうな気がしてくる。

脳番地を連携させる

脳科学的に正しい英語学習法とは、何だろうか。それは「脳番地の連携」および「好きなことをやる」ということ。まず、脳番地の連携から紹介したい。

脳の神経細胞は、機能ごとにまとまっている。脳の場所によって、思考系、感情系、伝達系、理解系、運動系、聴覚系、視覚系、記憶系といった機能がある。これを脳番地という。

そして、英語がコミュニケーション手段である点を考えると、脳の伝達系を連携させながら学習するのが効果的だという。

つまり、どんなスキルを学ぶにしても、どんな教材で学ぶにしても、必ず「話す」(声に出す)ということである。

従来のインプット学習は、英語の意味が理解できればいい、という発想になりやすい。耳で聞いて理解、目で読んで理解。その繰り返しになりがちである。

しかし、それだと一部の脳番地が活性化するだけで終わってしまう。どうせ英語を学習するなら、複数の脳番地を一気に鍛えた方が効率がいいのだ。

能動的にやることが脳の栄養

もう1つ、脳科学的に正しいのは、「好きなことやる」ということ。脳は「好き・嫌い」という嗜好の影響を強く受けるという。

「嫌々やっても英語が上達しない」というのはよく聞く話だが、「脳の性質上そうなっている」と説明されると、妙に納得してしまう。能動的にやらないと脳は向上しない。

本書の中に、著者が英語学習で「一番役立ったこと」「かなり役立ったこと」「それなりに役立ったこと」「ほとんど役立たなかったこと」が書いてある。役立ったことは、仕事についての英文資料を探し回ったことだという。

逆に、発音の矯正、文法学習、英会話のグループレッスン等は、著者にとって乗り気ではなかったので、結果的に役に立たなかった。文法学習がダメというわけではなく、著者の「好き・嫌い」が学習効果を左右した点が重要である。

私たちはもう一度、「したいこと」と「やらされていること」を明確に分けた方がいいだろう。「英語の上達に役立つ教材かどうか」を考える前に、「その学習が好きなのか嫌いなのか」を優先しよう。それが脳にとって一番良いことだし、英語の習得にも役立つのだ。

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