グロービッシュとは何か

グロービッシュとは、1500語と基本文法に制限したシンプルな英語のことです。

このページでは、グロービッシュについて、あらゆる角度から解説しています。最後に、グロービッシュ関連の書籍も紹介しています。

非ネイティブ同士の標準英語

グロービッシュは「非ネイティブの共通語」(世界共通語)として、フランス人のジャン・ポール・ネリエール氏により提唱された。

限られたボキャブラリーと文法だけを使うので、ノンネイティブが習得しやすい。

2004年に最初の本を刊行するとフランスだけでなく世界的なベストセラーになる。日本でも2009年に最初の翻訳が刊行される。

2010年に週刊東洋経済などで特集が組まれて知名度があがり、2011年頃からグロービッシュ関連の本が増えてきた。

ビジネスシーンでは、「グロービッシュ=簡易ビジネス英語」として便利な概念になっている。ビジネス英語の一大潮流となりつつある。

グロービッシュの背景

「グロービッシュ」が提唱された背景には、経済のグローバル化がある。

以前は英語圏でビジネスをするために英語が必要とされていたが、現在では非英語圏でのビジネスが急増したので、非ネイティブ同士で英語を使っている現実がある

たとえば、日本企業が韓国・中国・インドといったアジア諸国を相手にビジネスをするときでも英語を使うことが多い。これは他の地域でも同様で、世界のどこにいってもビジネスで英語が使われている。

それを踏まえて、ビジネス共通語としてシンプルな英語を定義しようとしたのが「グロービッシュ」である。

グロービッシュの内容

では、グロービッシュの内容は具体的にどういったものだろうか。

主なポイントは、発音、語彙、文法。

発音はアクセント重視

英語はアクセントをしっかり抑えると通じやすいので、難しい発音規則は無視してアクセントを重視する。

単語は1500語

グロービッシュでは基本1500語を使う。ただし、あくまでこれは基本となる数字で、派生語は含まない。

たとえば、1つの単語から多くの派生語がうまれる。
care(注意する、世話する) → careful, carefully, carefulness, careless, carelessness, uncaring, caretaker など。

基本となる語は1500でも、こうやって派生語を含めてみれば5000語ほどになる。英語ネイティブの多くは生活の中で3500語程度しか使わないという統計もあるので、基本語1500で十分なのだ。

また、my nephew(甥)などという英単語を知らなくても、the son of my brother(兄弟の息子)と言い換えれば済む。基本語でなんとか言い換えて意思疎通を図ることになる。

ちなみに、ビジネスではそれぞれの業界に必須の専門用語がある。対話をする両者が合意すれば、1500語以外の専門用語も使うことができる。

文法は能動態のSVO主体

いわゆる5文型のSVOを主体にして文章を作る。動詞によってはSVOO文型も含む。

受動態はなるべく使わない。「過去完了進行形」「未来完了進行形」のような複雑な時制を使わずに基本時制6個を使う。

つまり、グロービッシュの英語とは、シンプルな単語で短く平坦な文章を作り、それを素朴につなげていって意志疎通を図る。ハードボイルド小説のようなイメージ。

制限項目

さらにグロービッシュの内容には以下の制限項目が加わる。

・イディオムを使わない。
慣用句というのは、時代、文化、社会的立場、年齢、職業によって嗜好が異なる。外国人にとって複雑すぎるので使わない。

・比喩表現を使わない。
文化が違えばその類比が通用しないこともある。相手に確実に通じることがわかっている場合をのぞいて使わない。

・肯定を求める否定の質問をしない。
まぎらわしい質問の仕方をしない。する場合は、期待する答えをじぶんから言ってしまう。

・ユーモアを使わない。
相手に理解されない可能性がある。また、そのユーモアはTPOにふさわしいものである保証がない。さらに相手を見下していると誤解されるトラブルも多い。無理して笑いを取ろうとしない。

上記4つの制限項目は文化に深く関わることなので、語学としては興味深い部分なのだが、「グロービッシュ」では不要だと考える。

なぜグロービッシュは重要か

1.投資効率の良さ

グロービッシュのメリットは何だろうか。もっとも重要なのは投資効率が良いことだと思われる。

通常の英語をマスターするためには、控えめに見積もって4年以上の集中トレーニングが必要になる。制限された英語の「グロービッシュ」なら、およそ1年ほどで身に付けることが可能。習得のための金銭コストも4分の1以下で済むことになる。

英語というのはグローバルビジネスに参入するための前提条件でしかないため、英語力はビジネス上のメリットと直接には結び付かない。グロービッシュとしての英語を早めに身につければ、余力をビジネス面に使えるので効率が良い。

ただし、4年以上かかっても確実な英語力をつけることがメリットになることもあるので、業種やキャリアプランによって意見は異なる。

たとえば、英米豪加といったネイティブ国との取引が多い業種であれば、やはりグロービッシュを超えた英語力が求められるだろう。その場合でも、最初に目指す英語レベル(マイルストーン)としてグロービッシュを使うことができる。

2.コミュニケーションの基盤

もう1つのグロービッシュの重要性は、非ネイティブ同士でコミュニケーションの基準をもてる点にある。

「グロービッシュで語ろう」と両者が合意すれば、基本語彙1500+基本文法のシンプル英語で交渉しようと合意したことになる。

両者の英語力が著しく異なる場合でも、グロービッシュという基準に両者が歩み寄ることで交渉が成り立つ。英語が苦手な人はせめてグロービッシュ・レベルまでは努力して英語を習得すること、そして英語が得意な人はグロービッシュ・レベルに制限して易しい英語を使うこと。

このように両者が目指す水準が一致すれば、それだけ交渉は成り立ちやすい。グロービッシュが普及すれば、このような「基準」として機能することになる。

ちなみに、英語圏のネイティブであっても、非英語圏でビジネスがしたいならグロービッシュに合わせることになるだろう。母国語だから流暢に操れるわけだが、だからといって相手のことを無視してペラペラしゃべるようなネイティブは、グローバルビジネスからはじき出されることになる。(非ネイティブ経済が大きくなり、グロービッシュが普及したときには)

なぜ「シンプル英語」という呼び名ではないのか

グロービッシュの内容を見ると、単なる基礎英語に過ぎないような印象をうける。非ネイティブの共通語として語彙制限が必要であるとか、そういった運動の主旨は理解できる。しかし、「シンプル英語」とか「世界の英語」ではいけないのか。なぜ「グロービッシュ」という造語にしたのだろうか。

この点について、提唱者のジャン氏が明確に答えている。傑作なので引用したい。

もし名前のどこかに”英語”とついていれば、英語のネイティブは、「よし、我々の勝ちだ。君たちは英語を上手に話すようになることだね」と言いかねない。「グロービッシュ」という名前によって、それが特別な英語であり、もはや「彼らの」英語でないことがわかる。
(ジャン・ポール・ネリエール 「世界のグロービッシュ 」)

英語にライバル意識を持つフランス人らしい発想といえる。英語がビジネスシーンで共通語になっている現実は受け入れるが、英語ネイティブの思い通りにはさせない。そんな気概がにじみ出ている。

グロービッシュは、非ネイティブが話す半端英語(ブロークン・イングリッシュ)ではない。世界の誰もが平等にアクセスできる「新しいコミュニケーションツール」なのだ。

グロービッシュを学ぶためのポイント

今後、ビジネス英語講座ではなく、グロービッシュ講座が増えていくかも知れない。企業はグロービッシュを身につけるように社員に求めることも考えられる。

グロービッシュを学ぶ際のポイントを4つにまとめてみたい。

レベルは「中学英語」と考えておけばOK

日本には「中学英語」という馴染みやすい言葉がある。レベルもほとんど重なっているので、中学英語を身につける水準をイメージしておけば問題ない。

グロービッシュの提唱者たちは、基本語を選定したり、使用文法を細かく定めたりなど、体系化に一生懸命になっている。しかし、学習者の私たちが「これはグロービッシュの範囲内か?」と神経質になっても意味がない。

理念をおさえる

両者の意思疎通を成り立たせることが最終目標であり、そのための基準に到達しておくことが肝心。それ以上に正確であるとか流暢であるとかは問われない。

こういった「グロービッシュ」の思想は、ビジネス英語を学ぶ日本の学習者にとって重要である。日本では英語の完璧主義が横行していて、それが悪影響を及ぼしている。

アウトプット練習に時間をかける

コミュニケーションの道具である以上、相手の言うことがわかるだけでは意味がなく、こちらからも発信できないといけない。つまり、書いたり、話したりというアウトプットをできるようにする。

グロービッシュは中学英語レベルだからといって軽く見てはいけない。テスト問題に答えるための「中学英語」が出来ても、コミュニケーションが取れないならまったく意味はない。手薄なアウトプットにしっかりと時間をかける。

上記の「グロービッシュの内容」を見てもらうとわかるように、グロービッシュというのは「アウトプットを簡単に行うための制限」といえる。

読む聴く(インプット)のレベルは一段高めることが望ましい

書く話す(アウトプット)は自分が表現することだから自分なりのレベルで行える。しかし、読んだり聴いたりするインプットは、相手がすることだから相手のレベル次第となる。

「お互いグロービッシュを使おう」と合意できればいいが、相手がそうしてくれる保証はない(グロービッシュを知っている保証はない)。相手次第の「読む聴く(インプット)」については、グロービッシュの範囲を超えても対応できるようにしておけば、それだけビジネス交渉の対応力が上がることになる。

グロービッシュ関連の書籍

世界のグロービッシュ ─1500語で通じる驚異の英語術 
提唱者のジャン・ポール・ネリエール氏による著書。英文と和訳の見開き対訳形式。英文はグロービッシュで書かれているので、それを読むだけでグロービッシュを体験できる。

グロービッシュ実践勉強法  
グロービッシュの勉強法を紹介。単にグロービッシュの範囲にとどまることなく、現実的なビジネスシーンに即した英語習得のアドバイスがある。

グロービッシュ・コミュニケーション術
58のビジネスシーンでネイティブ英語とグロービッシュ英語を比較している。

1日10分グロービッシュ学習法
著書の体験を元にグロービッシュの学習法を紹介。スマートフォンの利用やWEBサイト紹介も。

グロービッシュ時代の これだけ! 英単語111【CD付き】
ビジネスシーンで重要な80単語などをトレーニング。

1500語で通じる非ネイティブ英語 グロービッシュ入門
グロービッシュの紹介とビジネスシーンでの実例。

非ネイティブのためのグロービッシュ式らくらく英語勉強法
「使える」英語を習得するための考え方

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